高速道路、建設より割引を
高速道路の新料金制度が迷走している。上限料金制を中心とした新たな料金制度を巡っては、民主党内でも異論が相次いでいたが、21日には政府・民主党首脳会議で小沢幹事長が見直しを求め、建設費に回す分を削って値上げ幅を抑制する方針を決めたと伝えられた。
これに対し、メンツをつぶされた格好の前原国交相は翌22日に首相官邸を訪れ、鳩山首相と平野官房長官に対し①現時点では見直しは行わない②法案については速やかな審議、成立をお願いする③新たな料金のあり方については、国権の最高機関である国会における審議を踏まえ、国土交通省が総合的に検討する──とする考え方を示し、了承された。
首脳会議で決めた見直し方針を翌日には政府として撤回したとも受け取れる展開だが、③にあるように、国会で見直しを求める声が多ければ、見直しもやぶさかではない、と読むことが可能だ。あくまでも党から言われて見直すのではなく、見直す場合でも国権の最高機関である国会からの求めに応じて見直す形をとることで、政策決定の政府一元化の建前を堅持したとも受け取れる。
この問題の発端は、そもそも、限られた割引財源を活用して新規路線の建設を求めた、昨年末の民主党要望に無理があったと見る向きが少なくない。割引原資は、10年間で3兆円という利便増進事業であり、この一部を建設費に回せば割引に回せる分が減り、利用者負担が増えることになるのは自明の理だ。
前原国交相は23日の閣議後会見でこの点を捉え、「党から建設促進を要望しておいて、値段が上がっていかんというのは二律背反のことを言っている」と反論した。財源は決まっているのだから、どちらかを立てればどちらかが立たなくなるのは当たり前だ。
一方で、「ベテランの小沢氏にしてみれば、どこからか予算を持ってきて双方を立てるぐらいのことができないでどうする、という気持ちなのでは」と解説する向きもあるが、どちらの考え方が政治の常識なのか小紙には判然としない。
ただ、はっきりしているのは、国交相が9日に発表した新たな料金制度では、多くの高速道路利用者が現在より値上げになるということだ。上限料金制を採用すれば、当然長距離利用者がより大きな恩恵を受けることになるが、上限料金に達する利用台数は普通車も大型車も全体の2割に過ぎず、利用台数の8割は確実に値上げとなる。
建設か、割引か。マニフェストとの関係からいっても、割引を優先するのが筋ではないか。
(日本流通新聞2010年4月26日付)