物流は高速道に誘導を

国土交通省が、6月中に実施する高速道路の上限料金制を発表した。車種ごとに上限額を定め、一定の距離以上を走行した場合にはその上限額までとする制度で、軽自動車を千円、普通車を2千円、中・大型車を5千円、特大車を1万円と設定した。曜日や時間帯を問わず、現金とETCも区別なく適用するという。
 一方、既存の割引制度については、一部の割引制度を除き、多くの割引制度は新料金に移行する際に廃止する。ただ、激変緩和措置として、大口・多頻度割引や時間帯割引は今年度に限って継続し、来年3月で廃止する方針を示した。
 トラック運送業界では、5千円以上の利用は全体の12%にとどまるため、「9割が値上げになる」としてこの上限制には反対していた。
 さらに、首都高速・阪神高速についても、長らく凍結されていた対距離料金に移行する方向が打ち出された。上限額は、当初案よりも引き下げられたが、普通車で900円、大型車で1800円とされ、端から端まで利用する場合は大型車で400円の値上げとなる。
 昨年暮れの民主党重点要望を受けて、これまで主に料金割引に充当していた財源を高速道路整備にも振り向けるため、割引原資が縮小され、実質的に値上げになるケースが多いと見られる。9日記者会見した前原国交相は「民主党と競うように値下げした自公政権下の料金より若干上がるが、試行的に行って影響を注視したい。(料金の)最終形を決める通過点と考えてほしい」と述べ、馬淵副国交相も「無料化社会実験と新たな料金制度の試行(の影響)をあわせて来年4月以降の料金制度を検討したい」と述べるなど、見直すことには含みを持たせている。
 全ト協は9日、「少なくとも近・中距離の通常業務時間帯は確実に値上げになる。首都高などについても営業用トラックは大部分が値上げとなる」と負担増を懸念するコメントを発表した。
 民主党は物流コストの低減を高速道路無料化政策の目的の1つに掲げているが、大口・多頻度割引が廃止されれば、協同組合経由で割引を受けている多くの中小運送事業者の負担が増すことは必至だ。
 前原国交相らは新たな料金について「試行的に行う」ことを繰り返し強調した。トラックの料金負担が増えて一般道を走行するようなことになれば、安全や環境に逆行しかねない。高速道路料金の「最終形」検討に当たっては、一般道の安全を確保するためにも、トラックを高速道路に誘導する観点で料金政策を考えるべきだ。

(日本流通新聞2010年4月12日付)