上限料金制、反対の大合唱に

全日本トラック協会の予算総会が18日開かれ、冒頭のあいさつで中西英一郎会長は、現在国土交通省が検討している高速道路料金の割引制度見直しに関して、今月4日に馬淵副国交相と会い、業界の要望を伝えていたことを明らかにした。
 要望には日貨協連の杉本守巧会長も同行し、現状より値上げとなることがないような制度設計とするよう要請したほか、かねて要望している営業車特別割引の導入が困難であれば、大口・多頻度割引の維持・拡充を行うよう求めた。
 国交省では、現在の割引制度を全面的に見直して、新たな上限料金制度に移行したい考えだが、同省では民主党の要望を受けて、割引原資の一部を高速道路建設にも充当する方針のため、新たな割引制度のもとでは、全体として利用者の料金負担が増すことは必至の情勢となっている。
 全ト協と日貨協連の要望は、こうした動きを牽制するものだが、中西会長によると、馬淵副国交相からは「よろしいという話は出ず、予算が厳しいという話がかなり強く出た」といい、現時点で色よい返事は得られていないようだ。
 新たな割引制度の実施時期についても、参院選後への先送りが報じられる一方で、前原国交相が会見で予定通り6月実施を明言するなど、迷走の様相を強めている。
 国交省の政務三役が中心となって検討している上限料金制度は、軽自動車1000円、乗用車2000円、トラック5000円が有力と伝えられるが、これも昨年末以来の報道ベースの「案」であり、公式には何一つ発表されていない。
 全ト協・日貨協連によると、営業用トラックの高速道路利用で、1回当たり5000円を超える利用は全体の利用回数の11・8%にとどまる。88・2%が5000円以下であり、78・1%が3000円以下だ。現行の深夜割引、昼間割引、大口・多頻度割引などを縮小あるいは廃止することと引き替えに上限制を導入するのであれば、9割近い利用が大幅な値上げとなり、物流コストの増大となることから、トラック業界としても絶対反対の姿勢を明確にしたものだ。
 この上限料金制度については、すでにJR7社やフェリー業界がこぞって反対しており、運輸関連業界では反対の大合唱になりつつある。
 「コンクリートから人へ」というスローガンのもと、公共事業の削減と高速道路無料化を推進するはずだった鳩山政権だが、その迷走ぶりは収まるどころか、混迷の度合いを深めている。

(日本流通新聞2010年3月22日付)