高速道路 民主党政権で値上げでは…

国土交通省が、高速道路料金の割引のための原資を高速道路建設に振り向けられるようにするための法案を今国会に提出する方針だ。昨年末の民主党重要要点を受けて、従来は料金引き下げとスマートインターチェンジ整備に使途が限定されていた「利便増進事業」の事業メニューに、不連続区間の建設やサービスエリア整備などを追加するものだ。
 利便増進事業の予算は、すでに高速道路会社の債務を承継するかたちで、09年度からの10年間で3兆円という金額が確保されている。毎年3000億円程度を料金割引に使えるはずだったが、この一部を建設に充当することになれば、割引のための原資が減ることは明白だ。
 高速道路の料金割引は、①高速道路会社が民営化時に始めた恒久割引②利便増進事業により08年度から実施されている割引率の上乗せや乗用車の休日上限千円など期間限定割引——の2つに分けられる。恒久割引は高速道路会社の負担により独自に行われているもので、マイレージ割引や大口・多頻度割引のほか、深夜割引など時間帯割引のベースの部分はここに依拠している。
 一方、08年度以降、数次にわたる経済対策で、時間帯割引の割引率が上乗せされたり、乗用車上限千円が実施されているが、これらは国の利便増進事業として国費で行われている部分だ。
 利便増進事業の財源を建設にも振り向けることで、直接的にはこの割引率の上乗せ分や上限千円などが影響を受けることになるが、国交省では高速道路会社の恒久割引についても「複雑な割引制度を整理する」(馬淵副国交相)考えのため、①と②の両者を合わせて割引制度全体が見直されることになる見込みだ。
 トラック運送業界にとって、最大の関心事は、料金水準そのものとともに、恒久割引である大口・多頻度割引の扱いだ。国交省は大口・多頻度割引の廃止も含めた見直しを検討しているが、馬淵副国交相は4日の会見で「自公政権時代、自民党政権時代から、様々なしがらみのなかで生まれた制度もあり、1つ1つを整理するのは簡単ではない」と述べ、別納割引から移行した大口・多頻度割引など過去の経緯がある割引制度の見直しの難しさを吐露した、とも受け取れる発言をしている。
 乗用車の上限千円は、JRやフェリー各社も反対しており、渋滞により物流にも悪影響を与えていることも考えれば廃止に異論はないが、高速道路無料化を標榜する現与党のもとで、少なくとも高速道路を恒常的に利用するユーザーの負担が増えるような制度とはすべきではない。

(日本流通新聞2010年3月1日付)