規制緩和の徹底検証を
国土交通省がいよいよ、トラック産業の将来ビジョン作りに着手する。10年後の2020年を見据え、今後のトラック産業をいかに持続的かつ収益力のある成長産業として発展させていくのかという観点から、トラック産業のあるべき姿を描き、そのために必要な方策を検討するものだ。
地球温暖化対策をはじめとする環境問題や交通安全対策に対する社会からの要請にどのように応えていくのか、少子高齢化・人口減少社会が到来するなかで、どのように良質な労働力を確保していくのか、経済のグローバル化の進展を踏まえ、アジアの成長力を取り込む方策はないのか——といった「大所高所論」(桝野自動車交通局長)から、足元の規制緩和見直しまで、幅広いテーマを取り上げて「ビジョン」の形で将来像を示す。
環境・安全に対する社会的要請に応えながら持続的に成長していくためには、Gマークやグリーン経営認証制度などのさらなる活用が考えられる。収益力を高めながら持続的に成長していくという視点からは、事業の高度化や高付加価値化の可能性が検討されよう。また、成長著しい東アジア諸国の経済発展を国内のトラック産業としていかに取り込んでいくかも論点となる。
少子・高齢化により、労働力人口が今後激減していくなかで、良質な労働力を確保していくための方策も議論してほしい。
そして、事業者にとって最も関心が高いのは、規制緩和の検証と制度の見直しだ。規制緩和見直しに対する事業者の要望は根強く、昨秋の全国トラック事業者大会でも「タクシーは新規免許と増車が凍結された。なぜタクシーだけできるのか」、「違反を繰り返す事業者の許可を取り消すなど規制を強化すべき」といった意見が相次いだ。
国交省の将来ビジョン検討会でも、こうした声に正面から応え、規制緩和を徹底的に検証してほしい。
規制見直しの象徴的なものが最低車両台数規制だ。規制緩和で5台に引き下げられて以降、事業者の小規模化が進み、その結果として事業者の質の低下、運賃水準の低下を招いているのではないか。
トラック関係の労働組合では、就業規則の届出義務が発生する規模である11台以上とすべきと主張しており、検討に値する提案だ。
5台割れ事業者の対策は、それ以前の問題だ。保有車両が5台を割ってしまう減車の規制強化、5台割れ事業者に対する運行管理者選任義務化などは以前から検討されている懸案であり、早期の実現を求めたい。
(日本流通新聞2010年3月1日付)