「棚ぼた」頼みではなく

貨物取扱事業の労災保険収支率が、郵政民営化による郵便事業会社の加入で大幅に改善している。
 2006年度に109・8%だったものが2008年度には90・3%へと2年間で19・5ポイント改善したというから驚きだ。保険料収入が2年間で161億円増えたのに対し、支出は27億円の増にとどまったためだ。全日本トラック協会によると、郵便事業会社では重大な災害が発生していないのではないかということだ。現に、死亡災害者数は2年間で50人減少している。
 貨物取扱事業の労災保険加入労働者数は2年間で約30万人増えており、全ト協ではこのうち25万人程度が郵便事業会社の労働者と見ている。
 トラック運送事業者にとって、労災保険の収支率が改善することは、保険料率の引き下げに直接つながることだけに、郵政加入による収支改善は「棚からぼた餅」的な話ではあるものの、歓迎すべきことだ。ただ、保険料率の見直しは、昨年4月に実施されたばかりで、通常のサイクルからすると、次の見直しは2年後となる見込みであり、そのためには09年度、10年度も収支率を維持する必要がある。
 不確定要素もある。国民新党などが主張する郵政見直しでは、持ち株会社、郵便局会社、郵便事業会社を統合した親会社の下に金融2社(郵貯、簡保)をぶら下げる3社体制とする方針だが、ユニバーサルサービス維持が色濃く出ており、郵便事業についても貨物自動車運送事業法上の扱いが議論の俎上にのぼっているようだ。
 郵便事業を事業法上特別扱いする方向の議論のようだが、一方で民間宅配便事業とのイコールフィッティングが崩れることになり、そう簡単に特例を設けるわけにもいかない。国民新党などは、郵政3事業の規制について、銀行法、保険業法、運送業法に代わる規制の整備も視野に入れており、郵便事業が再び運送事業法から外れてしまう可能性も否定できない。そうなれば労災保険の収支率にも影響が出るのは必至だ。
 トラック運送事業の死亡災害者数(速報値)は昨年105人となり、前年より31人減少した。率にすると22・8%の減少だ。種々の安全対策や業界の事故防止の取り組みなどにより、交通事故が減少していることによるものと見られる。
 増加傾向にある過労死も今後の課題だ、と全ト協では指摘している。労働者数25万人という郵便会社の影響は大きいが、「棚ぼた」頼みではなく、地道に事故防止努力を続けていくことが肝要といえそうだ。

(日本流通新聞2010年2月22日付)