トヨタの信頼回復に期待

陸運大手の2010年3月期第3四半期(4−12月)決算が出揃った。大手・中堅・地場の主要16社の業績は、売上高増収企業は少ないものの、営業利益は半数の8社で増益を確保し、通期見通しでは11社が増益を見込むなど、回復基調にある。昨年1−3月の最悪期を脱し、その後回復ペースを持続しているものだが、今第4四半期(1−3月)は不透明感も強く、慎重な見方も少なくない。
 一方で、トヨタ自動車の大規模リコール問題が波紋を拡げている。日本を代表する製造業の、しかも裾野の広い自動車産業の問題は、回復途上にあるトヨタ自動車の業績のみにとどまらず、ようやく上向いてきた日本経済全体への影響も心配されるからだ。08年秋の営業利益1兆円下方修正に続き、第2のトヨタショックになるとの懸念もあるほどだ。
 日本通運の鉄道コンテナ取扱個数は、今年1月に前年同月比2・5%増となり、08年9月以来、1年4ヶ月ぶりに増加に転じた。トヨタの自動車部品を輸送する「トヨタ列車」が1月以降、1日1運行から2運行に増発されたことの影響が大きい。トヨタの業績は、物流業界にも少なからず影響を与える。
 トヨタの品質問題を巡っては、米国でのアクセルペダル不具合に続き、日本国内でも人気車種「プリウス」のブレーキ問題が表面化し、同社の豊田章男社長は5日、9日と2度の記者会見を開いて事態の沈静化を図った。9日、東京本社で行われた会見で、豊田社長は「お客様に不安を与えることになり、誠に申し訳ない」と陳謝し、信頼回復に全力を挙げる考えを強調した。
 米国では、秋に中間選挙を控えていることもあり、トヨタへの批判が過熱気味だ。米運輸長官が「トヨタ車に乗るな」と発言したことが伝えられるなど、日米間の摩擦に発展しかねない様相を呈した。この点について、9日に記者会見した前原国土交通相は「この問題が自由な国際市場を歪めるようなことがあってはならない。お互いが冷静な対応を取るべきであり、外交問題が起きないようにしなくてはならない」と述べ、米国の対応を牽制した。
 豊田社長は近く訪米し、今回の一連の品質問題について関係者に説明する考えだ。米国での逆風は簡単に収まる気配を見せないが、一方でトヨタの工場がある州の州知事らは、トヨタを擁護している。豊田社長も「北米では50年間ビジネスをしてきた。これからもよき企業市民といわれる評価を頂きたい」と話しており、日本経済のためにもトヨタの信頼回復に期待したい。

(日本流通新聞2010年2月15日付)