中小事業者に政策的配慮を
国土交通省が、大口・多頻度割引の廃止を検討しているという。国交省では、大口・多頻度割引のほか、マイカー向けのマイレージ割引、通勤割引、早朝夜間割引、深夜割引といった民営化時に道路公団が開始した既存割引制度を廃止して、来年度から実施する「統一料金制度」の原資とする考えなのだという。
国交省で高速道路料金を担当する馬淵副大臣は昨年末の予算案決定の際「今の割引制度は全面的に見直す」と述べていた。
「統一料金制度」は、民主党の小沢幹事長が昨年12月16日に政府に対して提出した「重要要点」に盛り込まれていた新たな割引制度だ。報道ベースでは、軽自動車1000円、乗用車2000円、トラック5000円という上限料金を設定すると伝えられているが、正式には何も発表されていない。
「トラック上限5000円」と聞くと、長距離輸送を行う事業者には魅力的に聞こえるかもしれない。ただ、業界の調査では、1回の通行料金が5000円を超える利用は全体の1割強に過ぎず、5000円以下の料金体系次第では、業界全体では負担増となる可能性が高い。
まして、大口・多頻度割引が廃止されるとなれば、多くの中小事業者は負担増となる。
大口・多頻度割引は、2005年の道路公団民営化の際、それまでの別納割引制度に代わる、新たなヘビーユーザー向け割引制度として創設された制度だ。経営基盤が脆弱な中小トラック運送事業者は、事業協同組合に加盟することで、スケールメリットを得るとともに、大手事業者に比べて与信力が乏しい面をカバーできる。
事業協同組合が高速道路会社との契約者となることにより生まれる与信機能は、基盤が脆弱な小規模事業者でも大口・多頻度割引を利用できる面とともに、高速道路会社にとっても、万一事業者から料金を回収できないような事態に陥った場合に、組合がそのバッファとなることで効力を発揮する。
事業協同組合の共同事業手数料に占める高速道路利用事業の比率は5〜6割だ。05年度時点の日貨協連調査によれば、この比率が80%を超える組合が3割を占める。大口・多頻度割引が廃止されて組合の存立が危うくなれば、燃料購入など他の共同事業にも悪影響を与えかねない。
中小企業が99%を占めるトラック運送事業には、政府による政策的な支援が不可欠だ。新たな高速道路料金の検討に際しても、日本の物流を縁の下で支える中小運送事業者への配慮を政府には求めたい。
(日本流通新聞2010年2月1日付)