「変革」「挑戦」で反転攻勢

物流企業トップが仕事始めの日に年頭あいさつした。各トップは日本経済の先行きについては“不透明”としながらも、「変革」「全社員が一丸」「挑戦」等、社員の積極性を促す前向きな言葉が目立った。
 ただ、現実は世界不況のあおりで、これまで右肩上がりの業績を上げてきた企業でさえも、今年度は7年ぶりの減収減益を見込んでいる。今年も厳しい年になるだろう。
 だが、物流大手トップの年頭あいさつからは、ここ数年間に実施してきた営業力強化やM&A等の経営改革が抵抗力を高め、企業体力に手ごたえを感じており、「景気が戻れば力強い成長モードに転じる」と、悲壮感を払拭し、反転攻勢への姿勢が読み取れる。
 現状は「物流需要が以前の水準までV字で回復することはない」との認識は共通している。こうした環境下にあっても、「景気停滞を他社との差別化と自社発展の好機」「不況の時こそ変革できるチャンス」と捉え、自社の得意分野での受注拡大と計画目標の達成に方針を掲げている。
 拡大・成長していくための取り組みとして「流通と物流の新分野事業への進出」を方針に掲げ、新分野の事業開発に挑戦する企業もある。また、社内で「現場力」「営業力」の重要性をいい続けてきた企業トップは、「国際力」を新たに付け加え「海外進出の強化」を打ち出している。
 フォワーダー大手のトップは、自社のグランドデザイン等を全面的に見直すともに、中国を中心とするアジア戦略に力を入れていく。さらに「収入源の多様化」として、これまでの航空輸送に頼った収入構成を変え、近い将来には「航空輸送」「ロジスティクス」「海上輸送」で3:3:3の収益構造を目指す。
 M&Aで業績を伸ばしてきた企業トップも、いつの日か「アジアを日本と同様に捉えないと生き残れない日が訪れる」と、海外展開に中国をターゲットに定めている。資本参加やM&Aも視野に入れて積極的に取り組んでいく。
 国土交通省が昨年暮れにまとめたトラック事業者統計よると、トラック運送の総事業者数は2008年度末(09年3月31日)で前年度比0・4%減の6万2892社と、初めて減少した。新規参入が前年度比16・1%減の1860社に対し、撤退は同25・7%増の2090社だ。
 トラック業界関係者によると、目立っているのは「真面目に事業をやってきた事業者が閉鎖(廃業)している」という。経営環境は厳しいが、中小事業者には、現状をしっかりと見据え、原価計算に基づく収支を把握した取り組みを期待したい。

(日本流通新聞2010年1月11日付)