「成長産業」へ企業努力を
2010年の幕が開けた。一昨年秋のリーマンショック以降、100年に1度といわれた金融危機から1年余りが経ち、世界各国の経済は持ち直しつつあるが、欧米諸国の本格的な景気回復は望めず、中国をはじめとする新興国の経済成長に期待が寄せられている。
日本経済に目を転じると、昨年7〜9月の実質GDPは年率換算で1・3%増へと拡大テンポは減速し、政府の経済対策による政策効果頼みの実態が透けて見える。新政権には、切れ目ない財政出動とともに、実需を生み出せる骨の太い成長戦略作りを期待したい。
日通総研の予測によると、今年度の国内貨物輸送量は前年度比6・4%減に落ち込み、2010年度も4・0%減の11年連続の減少が見込まれている。一方、2010年度の輸出貨物は、中国などアジア向けを中心に海運が7・8%増、航空も8・8%増と見込まれ、輸出には期待が持てそうだ。
歴史的な政権交代から百余日が経過し、新政権の人気にも陰りが見え始めた。
民主党政権下で初の税制改正作業は、政府税調に審議を一元化し、審議をインターネット中継するなど、透明性については一定の評価がされたが、重要項目がなかなか決まらず、最終的に民主党幹事長室が党の要望提出というかたちで「決断」を後押しするなど、政府への政策決定一元化については疑問符が付いた。
トラック運送業界でも関心が高かった暫定税率の扱いについても、国債発行額を44兆円に抑えるという政府方針を堅持するため、党側が税率水準の維持を打ち出し、鳩山首相もこれを追認するかたちで決着した。最終段階では、税率の一部引き下げも検討されたが、なぜ一部引き下げが実現しなかったのかは「ブラックボックス」(政府税調幹部)だ。メディアへの公開やネット中継で「透明化」は図られたものの、最終的には自民党税調時代に「インナー」と呼ばれた幹部のみで重要事項を決定していたシステムと余り変わらないように感じる。
民主党政権初の税制改正は、業界と政治との関係にも大きな変化をもたらした。トラック運送業界も例外ではなく、とくに民主党幹事長室が県連経由で業界の陳情を集約するシステムを構築してからは、中央、地方で民主党に対する陳情が繰り広げられた。
運輸事業振興助成交付金の存廃問題は、民主党要望に盛り込まれ、幹事長室が調整に乗り出した結果、暫定税率が実質維持されたこともあり、現行の仕組みを継続することで決着を見た。ただ、来年度はより本質的な議論が行われる可能性もあり、どのような帰趨をたどるか予断は許さない。
三日月大造国土交通政務官は昨年末、本紙などとのインタビューに応じ、新政権としてトラック産業のビジョン作りを進めていく考えを表明した。そのなかで政務官はトラック産業を成長産業にしていく観点で検討を進める方針を明らかにしている。経営基盤が脆弱な中小企業が過半を占めるこの業界には、政府の積極的な支援が不可欠だが、最終的に行動を起こすのは実際のプレイヤーである事業者だ。2010年は「成長産業」に向けての創意工夫、企業努力に邁進したい。
(日本流通新聞2010年1月1日付)