物流が環境分野で地域に貢献

物流のカーボンニュートラル実現へ、大手運送事業者、自動車メーカー、荷主が連携して電動商用車普及へ大規模な実証実験が行われる。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の新たなプロジェクトに採択されたもので、本格的な社会実装を見据え、大規模導入に必要となる運輸事業者の運行管理と一体的なエネルギーマネジメントシステム(EMS)を構築するものだ。
NEDОのグリーンイノベーション基金事業において2030年までの長期にわたって実施される。東京都、福島県、幹線輸送(東北-関東-関西)で行う実証ではFC大型・小型トラック、BEV小型トラック・商用軽バン約580台を導入、これにあわせて新たにメーカーの共同開発も発表され、商用車の電動化推進の動きが加速化する。
国内のCО2排出量のうち自動車の利用によるものは16%を占め、うち40%は商用車による。しかし既存の電動車の商用利用は航続距離が短く、充電時間も長く要するなど乗用車に比べ普及が遅れている。
NEDОでは車両導入のイニシャルコストや充電による契約電力量の増加、関連設備の導入・保守など「運輸事業コスト」と、送配電設備の増強、整備コストの高い水素ステーションの設置・運用など「社会コスト」の双方を許容可能な範囲に収める必要があり、エネルギー消費量が多い商用車が計画的に運行されることに着目した。そこで運行管理と一体的にエネルギーマネジメントし、同じエリアを走行する商用電動車を連携させ、エネルギー利用と運行の最適化を図る考えだ。
大規模実証は参加10社のほか大手自動車メーカー出資のCJPT参画企業も連携し、物流、インフラ、自動車メーカーがノウハウ・アイデア・データを出し合う。商用自動車のカーボンニュートラルに向けたモデル作りが期待される。
ヤマト運輸はこの大規模実証でFC大型幹線運送を、日本郵便はFC小型エリア内運送、FC大型幹線運送で参加するほか、それぞれ集配車のEV化・最適化に関する単独の実証も採択された。幹線輸送からラストマイルまでトラックの電動化に向けた課題抽出と有効な施策を広く共有したい。
運行管理と一体となったEMS構築は、電動車の商用利用促進とともに社会全体でエネルギー利用を最適化するスマートモビリティ社会の実現につながる。環境分野における地域貢献の観点からも物流業界の役割をしっかりととらえたい。