地域に安心・安全届ける

各地で大きな爪痕を残した台風19号。地域によっては被害の全貌も未だ明らかでない中、復旧・復興へ懸命な作業が続く。地盤が緩み、今後も大雨への警戒、2次災害への対策が急がれる。
トラック運送事業者も営業所の浸水や車両水没の被害が報告され、被災地の輸送力確保が課題となっている。一方で緊急支援物資輸送や代替輸送と、あらためて災害時におけるトラック運送業の果たす役割の大きさを再認識する。これに迅速・的確に対応することは重要インフラとしての社会的使命である。
千葉県に大きな被害をもたらした台風15号、今回の19号と自然災害が多発している。首都直下地震、南海トラフ地震と巨大地震への対策とともに、こうした風水害は規模の大小にかかわらず発生場所や地形で被害状況も異なり、あらゆるケースで対策を講じる必要がある。
予知できない地震に対し、風水害は減災の視点からも国・自治体、各インフラとの強い連携が求められる。
鉄道輸送では昨年7月の西日本豪雨から被害のない段階での計画運休が本格的に実施された。今回も早くから広域に運休情報が発信され混乱を抑制した。休日に重なり再開時の混乱はさほど見られなかったが、平日実施では新たな課題も浮き彫りになっただろう。しかしこうした予知できる災害に対しては、企業側も柔軟な対応が浸透しそうだ。
物流関係各団体も災害対策に一段と踏み込んだ体制づくりに着手している。
全日本トラック協会は、今年5月に「災害物流専門家育成プログラムワーキンググループ」を立ち上げた。緊急支援物資輸送に関し、支援物資の受け取り・拠出拠点での支援物資の滞留で、避難所への供給に支障がないよう専門家の育成に取り組むもの。すでに拠点運営、輸送をテーマとした議論が行われ、来年度詳細な内容を決める。
日本物流団体連合会では、現行のBCP(事業継続計画)作成ガイドラインをバージョンアップし、今年度末までに取りまとめる。現行のガイドラインは東日本大震災発生の翌年に策定されたもので、その後の状況変化を踏まえ新たな項目を加えるもの。これには風水害対策や、電源喪失時の対応についても盛り込む方向で検討を進めているという。
災害時だけでなく平時から防災・減災への意識を強くすることが、地域に安心と安全を与え、トラック運送業の社会的信頼をより確かなものにする。