事業継続へベクトル合わせる

小規模トラック運送事業者の経営対策を検討してきた全日本トラック協会の特別対策委員会が答申を取りまとめた。IT化や協同組合の利活用などあるべき方向を示している。1300社以上のアンケート調査から得られた事業者の実態も明らかとなり、認識を共有するとともに、対策の具体化が急がれる。
コロナ禍でトラック運送業もとりわけ小規模事業者の事業継続が危惧される。金融支援策で急場を凌いできたところも多いが、第4波の広がりで収束が見えない中、一段の支援策が求められる。
アンケート調査(昨年9-11月実施)によると、コロナの影響で小規模事業者の5割以上が収益減となり、この状況が続けば経営存続が1年未満との事業者が4割である。「資金がショートし銀行から借り入れた」事業者が15%程度、「政府や民間系の融資を活用・検討している」が4割程度と厳しい現実に直面する。
トラック運送事業者は保有台数10台以下が55%、20台以下が76%で中小企業が99%を占める。全ト協の2018年度調査では、営業利益率が業界全体の0・1%に対し、10台以下は▲1・2%、11~20台以下は▲0・1%と小規模事業者ほど厳しい経営体質にある。
こうした中でコロナの長期化は経営を大きく圧迫する。とくに外食産業、航空貨物、引越貨物といった品目は大きな受注低迷を強いられており、これら事業者は改善策が待ったなしの状況だ。
一方で調査結果からは自社の現状分析を「行っていない」事業者が6割以上、経営計画を「策定していない」事業者が4割程度との経営把握状況も浮き彫りとなった。「後継者はいない」との回答も2割程度ある。
コロナ収束後も貨物量自体は以前の水準に戻らない可能性がある。答申には輸送量の縮小を想定しながらも、物流の維持と事業継続には「生産性向上」「働き方改革の実現」が必要と説く。また、感染症に頻発化・激甚化する自然災害に備え、小規模事業者も事業継続計画(BCP)の策定は必然であり「これからの進むべきバイブル」(坂本克己全ト協会長)である今般の答申書の意義は大きい。
支援策の重点に掲げたIT機器の活用、協同組合加入の利活用、適正運賃収受についても、まずその利点をいかに事業者に周知させるかが課題だ。
トラック運送業が社会的インフラの役割を果たすためにも、事業者数の大半を占める小規模事業者の経営の維持へ今一度しっかりとベクトルを合わせる必要がある。