トラックの無理、国民全体で負担を

トラック輸送は、経済活動や国民の暮らしを支える大動脈であり、社会的なインフラだ。しかし、世間からは「低賃金で長時間労働・労災事故が多い」職業とみられている。若年層の就業希望職種とはなっておらず、ドライバーの高齢化と若年ドライバー不足が進行している。

7、8日に都内で開かれた運輸労連の49回定期大会で、難波淳介委員長は、こうした現状に対して「今の労働条件や就労環境をこのまま続けて行けば、近い将来、今は当たり前となっている翌日配達や時間指定といった物流システムの維持も出来なくなってしまう」と危機感を示した。

トラック運送業界では「低賃金で長時間労働・労災事故が多い」職種からの脱却に向けた取り組みが急務である。

年間総労働時間を他産業と比較すると、連合の主要組合平均は2045時間、厚生労働省調査の産業計平均が2160時間であるのに対し、トラック運送業は運輸労連調査で2626時間だ。他産業とは年間5~600時間の大きな開きがある。

また、厚労省がまとめた2015年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」によると、認定件数のワースト1は道路貨物運送業だ。

こうした現状の背景として、規制緩和以降のトラック運送事業者数の急激な増大が過当競争を招き、運賃値引きが低賃金につながり、過剰なまでのサービスが長時間労働を引き起こしていると指摘されている。

つまり、荷主との取引で「安全に運送するために必要な運賃」を示すことができず、労働条件や労働環境を改善できない状況が続いている。

こうしたなかで、荷主との取引環境や労働条件等の改善に向けた「トラック輸送に関する取引環境・労働時間改善協議会」の議論に関心が集まっている。13日、中央協議会に適正運賃・料金収受にテーマを絞った検討会が設置され、初会合を開く。

国土交通省では、運賃以外の料金を明確にし、荷役などの附帯作業や手待ち時間などの費用を確実に収受する方策等を検討していく考えだ。

関係者からは、「業界のみならず、経済界からもドライバー不足に対して警鐘が鳴らされているにもかかわらず、トラックの直接の利用者には実感がないようだ」との声を聞く。顧客には、運送会社が無理をしてでも約束通り配送しているためだ。

その無理をしている部分をコスト化し、荷主、消費者、ひいては国民全体で負担するかたちにしないと、インフラとしてのトラック輸送を維持できなくなるかもしれない。