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日本流通新聞10月19日付紙面から

社説:物流の取引慣行改善に期待

経団連が「企業の競争力強化と豊かな生活を支える物流のあり方」と題する提言をまとめた。

提言では、「物流を介在させることなく、効率的で円滑な企業活動や満足度の高い暮らしをおくることは、今日的には事実上、困難だ」と物流の重要性を指摘し、その物流を取り巻く外部環境が大きく変化し、経営環境が厳しさを増しているとの現状認識を示した。

外部環境の変化としては、国内需要の変化と国内産業のサービス経済化、担い手の高齢化と人材不足の深刻化、サプライチェーンのグローバル化への対応、大規模災害の発生リスクへの対応などをあげ、「官民連携で課題の克服や新しい産業構造への対応を取らなければ、我が国産業全体の競争力が弱体化する恐れがある」と危機感を露わにした。

めざすべき物流の1つとして、収益性のある物流の確立をあげ、これを実現するために、「物流事業における対価の適正収受を前提とした適切な競争環境を整備することが必要だ」とし、具体的には契約書面化の徹底・順守、輸送・付帯作業の区分の明確化、既存の物流設計の見直しを進めるべきだと指摘した。

経団連が運賃値上げを容認した、とまでは言えないものの、対価の適正収受を促すものとして注目される。例えば、輸送と付帯作業の区分を曖昧にしたまま、実質上ドライバーが無償で荷役作業を行うケースが多いが、こうした作業の内容を書面化により明確にし、荷役作業に対する対価も適正に収受すべきだと指摘したものだ。

また、こうしたドライバーによる荷役は、女性がドライバー職を敬遠する要因にもなるとして、契約書面化の徹底と順守は、女性の活用という観点からも重要だとしている。

さらに、物流設計の見直しでは、例えば、週末分の貨物でも月曜朝一の着荷が要請されているなど、固定化した納入・輸送・保管条件を変更していく必要がある、としている。

提言は、こうした取引慣行の見直しについて、「ドライバーの作業時間や手待ち時間の削減による長時間労働の是正をはじめ、物流効率化を図るうえで避けて通れない課題だ」として、関係者による積極的な取り組みに期待を寄せた。

折しもトラック運送業界では、中央および地方に取引環境・労働時間改善協議会を設置し、長時間労働縮減に向け荷主とトラック事業者連携の取り組みが始まっている。こうした動きに呼応した格好の経団連の提言を評価するとともに、関係者の連携によるトラック運送事業の取引慣行改善に期待したい。

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