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日本流通新聞7月20日付紙面から

社説:時短協議会への期待

 トラック関係労使の共同セミナーや労使懇談会で、労組幹部から「いま、トラック運送産業は大きな転機を迎えつつある」という声が聞かれた。転機とは、深刻な労働力不足を背景とした労働環境改善の動きを差す。
 トラック運送産業は、1990年の規制緩和以降、激しい企業間競争と荷主優位の取引条件下で、経済的・社会的負担を強いられてきた。その結果として、急速に進む少子高齢化社会のなかで、トラック運送の現場から若者の姿を減少させた。
 労組関係者によると、トラック運送産業で働く労働者は他産業の労働者より年間400時間も長く働き、年収は100万円も安い。20歳代のトラック労働者の割合は10%と全産業水準を大きく下回っており、これらが人材不足感を高める要因となっている。
 トラックドライバー不足は、現従業員の過重労働につながり「重大事故の多発や労働者の脳・心臓疾患などの健康破壊の要因にもなっている」ことが確認されている。
 業界内では、若年層のドライバー不足を克服することが、トラック運送事業の将来展望に関わる最も大きな課題として提起されている。その解決策の一つが長時間労働の解消など、将来にわたって安心して働き続けられる労働環境の実現である。
 労働力確保に向けたトラックの長労働時間の改善に、国を挙げて取り組むプロジェクトともいえる「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」が5月に発足した。トラックの現状に対する関係者の危機感がうかがえる。
 協議会は、行政(厚生労働省、国土交通省、経済産業省)、財界(経団連、日商)、大企業(トヨタ自動車、三菱商事)、労働団体(連合、運輸労連、交通労連)、業界団体(全ト協)、学識経験者などで構成される大掛かりなものだ。中央のほか、各都道府県にも協議会を設け、4年間かけて長時間労働改善の実現をめざしている。
 5月20日の中央協議会初会合では学識経験者の1人が「日本の産業は生産効率の高さが強みだが、トラック輸送の犠牲のもとに成り立っているのであれば、システムの改善が必要だ」と、荷主の都合に合わせた商慣行改善の必要性を指摘した。
 全国で地方協議会の立ち上げが進んでいる。4年間かけて長時間労働を改善、定着させる取り組みがスタートする。単なる対処療法に終わらせず、トラック運送事業を魅力ある産業とするための抜本対策を明確に打ち出し、関係者が足並みを揃えて取り組んでほしい。

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