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日本流通新聞10月6日付紙面から

社説:政府の転嫁要請を追い風に

 トラック運送事業の中小企業・小規模事業者の多くは、円安などに伴う原材料や燃料価格高騰、ドライバー・車両不足などで、収益改善の動きが鈍い。
 全国中小企業団体中央会が9月22日に発表した8月の景況調査によれば、運輸業の売上高DI(指標)は悪化し、景況と収益状況は低迷し続けている。
 運輸業を含む全業種も売上高の悪化幅が大きく、景況は5カ月連続の悪化だ。原材料高や燃料高、電気料金の引き上げ等の影響を指摘する報告が依然として多く、価格への転嫁も容易でないことを裏付けている。
 こうした中小企業・小規模事業者の収益を圧迫している実態を踏まえて、経済産業省は2日、原材料・エネルギーコスト増加分の適正な価格転嫁を、経団連や日本商工会議所など財界はじめ業界431団体へ経済産業大臣名の文書で要請した。
 文書は、急速な円安の進展によって「原材料やエネルギーコストの増加が、とりわけ中小企業・小規模事業者の収益を強く圧迫している」と懸念。中小企業・小規模事業者がコスト増を適切に価格転嫁することを受け入れるよう求めている。
 価格については、下請振興法で「材料費、市価の動向等の要素を考慮した合理的な算定方法に基づき適正な利益を含み、決定するもの」とされている点を強調。さらに、親事業者による一方的な「買いたたき」や「減額」などは下請代金法で禁止行為として規定されていることを改めて指摘している。
 トラック運送事業者からは「燃料費、人件費高に対する適正な運賃転嫁については、荷主の理解が得られるようになった」という声が聞かれる反面、「ドライバー不足や燃料費の高騰でコストアップしているのに、運賃・料金に転嫁させてもらえない」といった声も少なくない。
 日通総合研究所がまとめた7‐9月実績(見込み/速報)によれば、国内向け「荷動き指数」は見通しのプラス3を下回るマイナス2と、前期(4‐6月/マイナス3)実績からは、ほぼ横ばいで推移した。繁忙期の10‐12月「荷動き指数」見通しは2ポイント上昇してゼロ水準となる見込みだ。
 いま、トラック運送業界では「ドライバー・車両不足や燃料費高騰、安全のためのコストアップを吸収しなければ、これからの繁忙期に『輸送力を確保できない』状況にある」(トラック業界関係者)という。
 政府が中小企業の価格転嫁を後押しする文書を発出した。これを追い風に、改めて適正運賃収受に取り組みたい。

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