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日本流通新聞3月31日付紙面から

社説:ドライバーがいなくなる

 全日本トラック協会が発表した2012年度決算版経営分析報告書が、トピックとしてトラック運送業界の人手不足問題を取り上げ、分析、考察を加えている。
 トラック運送業界では、必要なドライバーが十分に確保できない状況にあり、国内物流の大宗を担う基幹産業として、憂慮すべき状況となっている。
 ドライバーなどの人材を募集しても、応募が少なく採用できないケースが全国で散見されることから、全ト協では「危機的状況にある」としている。
 厚生労働省調査によると、トラック運送事業の総労働時間は全産業平均より2割以上長い。一方、1時間当たり給与は、全産業平均が約2200円弱であるのに対し、トラック運送業は約1600円で、600円弱の開きがある。長時間労働で低賃金という労働条件の悪さも人材確保が困難になっている要因だ。
 2012年度経営分析によると、売上高に占める人件費比率は45%強で、営業利益率は3期連続で営業赤字だ。営業赤字が継続するなかで、ドライバーの給与を引き上げたくても引き上げられず、燃料価格上昇分さえ運賃に転嫁できない現状では「労働条件の改善は困難」と指摘している。
 トラック運送業界では、燃料費や車両価格が上昇するなど、運送原価の上昇要因が目立つ。一方で、原価に見合った運賃を収受できないケースが多く、人件費を引き下げて収支を確保してきた。このため、トラック運送業には若い人材が集まらない傾向がある。
 とくにけん引車、大型車ではドライバーの高齢化が著しく、若手の人材が少ないため、全ト協は「10年後、20年後の将来、安定した輸送を提供できなくなる恐れがある」と危機感を募らせた。
 全ト協の経営分析は結びで、「荷主、元請事業者には、実運送事業者の経営改善を図るため、適正な運賃への見直しに向けた取り組みが必要である」とし、実運送の運賃引き上げを促している。
 若年運転者の確保策について、川合物流連会長は記者会見で「決め手はない」と述べ、「長距離は必然的に鉄道や船で運ぶという棲み分けがされてくる」との認識を示した。
 国交省自動車局でも人手確保策の検討を開始しており、物流連も新年度から検討を行う。全ト協の星野会長も人材の確保・育成策の重要性を強調しており、多方面で検討が行われることになりそうだ。このままではトラック業界からドライバーがいなくなってしまうという危機感を持ち、叡智を絞りたい。

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