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日本流通新聞11月11日付紙面から

社説:タクシーの次はトラックだ

 タクシーの事業規制を強化する法案が衆院を通過した。
 タクシー事業は、2001年に需給調整規制が廃止され、原則自由化された。ところが、地域によっては事業者が増車により売上げを確保しようとしたため、供給が過剰となり、1台当たりの売上げが減少、その結果歩合給比率の高い運転者の収入が減少した。「労働条件悪化の結果として、輸送の安全を損ないかねないという問題が発生した」(金子一義元国土交通相)という訳だ。
 このため、2009年に政府提案で特定地域特措法を制定し、特定地域を定めて減車できる仕組みを作ったが、「自主的な減車だったため、思うように減車が進まなかった」(同)ことから、今回の法案では「全事業者が一致して減車できる枠組みを盛り込んだ」(同)のだ。
 法案は、自公民3党共同提案の議員立法で国会に提出された。
 供給過剰地域を特定地域として指定し、新規参入と増車を禁止するとともに、供給輸送力の削減について定めた特定地域計画を作成し、国交相の認可を受ける。輸送力の削減は、減車や特定の曜日に営業しないなどの方法で行い、削減しない事業者に対しては営業制限を命令できる仕組みだ。
 さらに、特定地域計画とそれに基づく行為は、独占禁止法の適用除外とする規定も設けた。独禁法の適用除外こそが、議員立法で法案を提出する最大のポイントだ。内閣提出法案では、とても望めないからだ。
 衆院での法案審議で、共同提案者の1人である三日月大造元国土交通副大臣は「話し合いや行為が独禁法違反に問われる可能性があると実効性を損なう」と規定を設けた理由を説明した。
 タクシーとトラックでは業態は異なるが、規制緩和による弊害が存在している点は同じだ。タクシーに先立つ1990年に規制緩和されたトラック事業は、その後新規参入が相次ぎ、2011年には事業者数は1.6倍に、車両数は1.3倍に増加した。
 一方、トラックによる貨物輸送量は、1990年に24.3億tだったものが2000年に29.3億tとピークを迎え、2009年は26/9億tと近年は減少傾向が続いている。1990年比の輸送量の伸びは1.1倍にとどまっており、供給過剰と言えないか。
 少なくとも、過当競争の結果が運転者の労働条件にしわ寄せされ、安全面が脅かされているという構造は同じだ。
 全ト協でも、タクシー法案について「大変注目している」(福本秀爾理事長)と関心を寄せている。タクシーの次はトラックの番だ。

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