日本流通新聞  
スペーサー


最新ニュース

日本流通新聞10月29日付紙面から

社説:新作業部会の検討に期待

 国土交通省のトラック産業将来ビジョン検討会に設置された最低車両台数・適正運賃収受ワーキンググループがようやく最終報告書をまとめた。
 規制緩和後の諸課題を解決するため、最低車両台数の引き上げや運賃規制の強化などが期待されたが、2年間かけて行われた検討の結果、最低車両台数引き上げは見送られ、緊急調整措置や標準運賃も発動困難と結論づけられた。
 今月15日に開かれたワーキングの最終会合では、報告書の内容に対して委員から「必ずしも十分満足していない」という趣旨の発言もあった。
 このためワーキングの報告書では、参入、多層構造と利用運送取引などの制度については議論を継続すべきと提言し、年内に親会議であるビジョン検討会を開いて早期に新たな作業部会を設置するよう求めた。
 つまり、規制緩和の検証とその見直しはこれで終わったわけではなく、引き続き検討は行われるということだ。
 新たな作業部会では、安全性、健全性確保の観点から参入基準を厳格化し、新規にトラック事業を始めようとする事業者の質を高めたうえで、既存事業者については事業許可更新制を導入することも検討する。
 許可更新制は、許可の効力に一定の期限を設け、失効前に改めて法令遵守の状況などを確認し、適格者に対して許可を更新するものだ。法令違反を繰り返すような悪質な事業者を排除する一方で、例えばGマーク取得事業者など優良な事業者は自動更新とするなど事業運営のインセンティブとなるような制度を検討する。
 ただ、これはどのような制度設計とするかにもよるが、すべての事業者に更新に伴う負担を課すため、業界内にも慎重な意見がある。ワーキングの報告書では、他の規制の効果や監査・処分の強化を図りつつ平行して検討を続け、導入の可否を判断することが適当とされた。
 新作業部会ではこのほか、ワーキングで指摘のあった下請け多層構造や利用運送事業者との取引にも改めて焦点を当てる。いわゆる「水屋」と呼ばれる、実運送を行わない利用運送事業者が取引に介在することで、運賃が中抜きされ、実運送事業者の運賃低下を招いて安全面に影響を及ぼしていると考えられているためだ。国交省は物流政策課などと連携して実態を把握したうえで対応策を検討する方針だ。
 トラック事業をはつらつとした活力ある事業とするため、新たな作業部会の検討に期待したい。

原価計算システムのご案内はこちら

原価計算システムサポートはこちら