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日本流通新聞10月1日付紙面から

社説:排ガス規制のツケは誰が払う?

 大型ディーゼル車の排出ガス後処理装置である尿素SCRシステムに不具合があることがわかり、環境省と国土交通省が原因究明と対策の検討に乗り出す。
 環境省では定期的に使用過程車の排出ガスを調査しており、2010年度の調査で5台を調べた結果、規制値の1.5倍〜2.5倍のNOx(窒素酸化物)が排出されていることがわかった。
 このため両省では、学識経験者らで構成する排出ガス後処理装置検討会を設置し、対策を検討していくという。
 ディーゼル車の排出ガスに含まれるNOxとPMは、一方を減らそうとするともう一方が増えてしまうという「トレード・オフ」の関係にある。このため、エンジン側の技術でNOxを減らした場合はPMを後処理で、エンジンでPMを減少させた場合は、NOxを後処理技術で減少させる方法が採られた。
 新長期規制が導入された当時はメーカーにより対応が分かれ、欧州系の三菱ふそうとUDトラックス(当時は日産ディーゼル)は後者を、日本勢である日野といすゞは前者を選択した。
 尿素SCRシステムの劣化が触媒など車両側に起因するものなのか、不正軽油や規格外尿素水など使用方法にあるのか、検討会の審議を待つことになる。
 ディーゼル車の排出ガス後処理装置を巡っては、トラック運送業界内でDPF(ディーゼル微粒子除去装置)の不具合報告が相次ぎ、全日本トラック協会が国土交通省に問題提起したばかりだ。
 DPFについては、ススが頻繁に溜まったり、溜まったススを燃焼させるために長時間のアイドリングを頻繁に強いられるといった問題が東京で報告され、全ト協が調べたところ、全国でも同様の問題が発生していることがわかった。
 とくに東京では、エコドライブに取り組む事業者が多く、「燃費が悪化した」と不満も強い。
 東京都がディーゼル車NO作戦を開始したのが1999年。都は2000年に環境確保条例を制定し、独自のディーゼル車規制を実施した。その後、国も排出ガス規制を強化し、メーカー各社は短期間で規制への適合を求められた。当時の規制強化に無理があったのではないか。DPFに続き、尿素SCRと、期せずして後処理装置のトラブルが相次いで明らかになった。当時無理したツケが回ってきたとも言えるが、そのツケは一体誰が払うのか。自動車ユーザーだけが払わされたのではたまったものではない。

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