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日本流通新聞8月6日付紙面から

社説:経済情勢に応じた制度設計を

 国土交通省のトラック産業将来ビジョン検討会に設置された最低車両台数・適正運賃収受ワーキンググループがようやく取りまとめの方向性をまとめた。2010年10月のワーキング設置から約2年をかけて導き出した結論だが、その内容は小粒と言わざるを得ない。
 ワーキングのメインテーマである最低車両台数については、安全規制であること、業界の意見がまとまらないことなどを理由に引き上げは見送られた。最低車両台数については小欄でもしばしば解説を試みたが、再度検証してみたい。
 最低車両台数規制はなぜ安全規制なのか。この規制は当初、営業所が所在する市町村の人口規模に応じて最低備えるべき車両数として定められていた。つまり、需給調整の観点からの規制だった。
 最低車両台数規制は、2003年から全国一律5台に引き下げられたが、規制緩和を巡る議論の過程で、台数規制を撤廃して個人トラックを認めるよう迫られるなか、何とか5台で食い止めるため、安全を規制の根拠としたのだ。
 最低車両台数として5台必要な理由は「輸送の安全を阻害する行為を未然に防止するための自主管理体制を事業者自身が確立し、維持していくうえで必要となる事業規模を担保する」ためだ。
 今回は逆に引き上げることが検討されたわけだが、安全確保のために一定台数規模が必要だとの理屈である以上、その基準を引き上げた場合には、既存事業者も引き上げなければ理屈が立たなくなってしまう。
 全ト協が全国47都道府県トラック協会に意見照会したところ、今回の最低車両台数見直しについては、「新規事業者だけ引き上げ、既存事業者は既得権を認め現状通り」が8協会、「新規事業者だけ引き上げ、既存事業者は猶予期間を設けてその後義務とする」が10協会、「引き上げは必要ない」が12協会と3つの意見に分かれ、集約できなかった。
 会議の場で全ト協の坂本副会長は「場合によってはより広い視点で議論し、法改正も視野に入れることが必要ではないか」と問題提起した。タクシーで検討されている免許制復活を内容とする議員立法を念頭に置いたものと見られるが、現状の法体系と考え方で限界があるのであれば、そういった方法しか参入規制を強化したり、運賃規制を強める術はないのかもしれない。
 国内人口の減少、製造業の海外移転など、90年の規制緩和時とは事業を巡る経済情勢が大きく変化している。時々の経済情勢に応じた柔軟な制度設計が求められている。

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