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日本流通新聞6月4日付紙面から

社説:「肌感覚」と異なる調査結果

 国土交通省が小規模トラック事業者の経営実態に関するアンケート調査結果の概要をまとめた。
 トラック産業の将来ビジョン検討会に設置された、最低車両台数・適正運賃収受ワーキンググループでの検討に資するため、今年3月に追加実施された調査だ。
 ワーキングの実態調査としては、一昨年11〜12月と昨年1〜3月に大規模な調査が行われたが、その結果、輸送の6割が真荷主との取引で、1次下請が34%、2次下請は5%にとどまるなど、巷間言われる下請重層構造が裏付けられず、業界内でも「実態と異なる」といった指摘があったため、改めて調査を行ったものだ。
 業界内では、規制緩和で急増した小規模事業者に問題があるとの指摘があることを踏まえ、調査は車両保有台数10台以下の小規模事業者を対象に実施した。
 小規模事業者の場合、一般的に「真荷主との直取引はなく、下請中心」といわれているが、追加調査の結果では真荷主との直取引があると答えた事業者は68%で、複数回答のため、元請けとの取引があるとの回答が57%、業者・水屋との取引があるのは18%となった。
 「6割が真荷主との取引」という前回調査と同傾向の結果で、またしても業界の「肌感覚」とは異なる調査結果となった。
 さらに、取引先との運賃決定について、小規模事業者は「交渉力がなく低水準の運賃を押しつけられている」、「ダンピングして貨物を確保している」というイメージが強いが、調査結果では「適正運賃に向けて、見積書を提出し、交渉できる」が60%に達し、「取引先の言い値で一方的に決まり、ほとんど交渉できない」が47%、「自社から運賃を引き下げて、積極的に受注を取りに行くことがある」が7%という結果になった。
 約半数の事業者が「言い値で一方的に決まり、交渉できない」と答えたのにはうなずける部分があるが、小規模事業者の6割が「適正運賃に向けて交渉できる」と答えたことには少なからず驚く。
 一方、トラック運送業以外に兼業があると答えた事業者は45%で、業種別では建設業が3割と最も多かった。真荷主1〜2社との取引が多い小規模事業者にとって、兼業はリスクヘッジなのではとの見方もある。
 高速ツアーバス事故をきっかけに「行き過ぎた規制緩和」が話題になる昨今、バス業界でも小規模事業者の存在が問題視されているが、より詳細に実態を把握する必要がありそうだ。

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