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日本流通新聞5月14日付紙面から

社説:事業規制の再構築を

 大型連休前半に関越道で起きた高速ツアーバスの事故が波紋を広げている。
 乗客7人が死亡、38人が重軽傷を負う大惨事となり、12年前の規制緩和を機に急成長を続ける高速ツアーバスの「陰の部分」(奥田副国交相)が露呈したかたちとなった。
 国土交通省では、事故当日の4月29日に対策本部を設置して対応に当たり、翌30日と5月2日には貸切バス事業者の「陸援隊」と旅行業者である「ハーヴェストホールディングス」に立ち入り検査を実施した。
 その結果判明した運行の経緯によると、事故を起こした日雇い運転者が2名で4月27日夜に千葉県の車庫を出発し、29日午前4時40分に事故を起こすまでの間、まったく運行指示や点呼は行われていなかった。
 河野運転者は居眠りで事故を起こしたと供述している模様だ。陸援隊には、日雇い運転者の選任、運行指示や点呼の不実施などが確認されたほか、名義貸しや運転者による白バス行為の疑いも出ている。また、ハーヴェストにも旅程管理義務違反などが確認された。
 乗合バス事業者が直接運行する高速バスと異なり、高速ツアーバスは旅行会社が主催して利用者と契約を結び、貸切バス事業者に運行を委託する形態が主流だ。
 ただ、旅行会社は利用者の安全確保に対して責任を負わず、運行を委託する貸切バス事業者に無理な運行を押しつけて安価なツアーを企画する傾向があったようだ。
 総務省が10年に実施した調査では、届出運賃の50%程度の運賃表を作成してバス事業者に契約を求める大手旅行業者もあったという。
 ひるがえってトラック運送事業である。その業界構造や事業形態は貸切バス事業に酷似している。規制緩和で事業者数が増え、過当競争の結果運賃水準が低下し、法令違反や運転者の労働条件にしわ寄せがいっているという構図は全く同じだ。
 前田国交相は「規制緩和を否定して事前規制強化の道を採るべきではない」とあくまでも規制緩和を肯定するが、規制緩和による安全性低下などのリスクは十分な事後チェックができてこそ相殺することができる。自動車局は監査要員を毎年増員しているが、それでもトラック、タクシーを含め10万社を超える運送事業者を300人で監視しなければならず、とても目は行き届かない。
 今回の高速ツアーバス事故を機に、事業者は安全確保に向けて再度身を引き締め直すべきだ。そして政治・行政は行き過ぎた規制緩和を見直し、バランスの取れた事業規制を再構築すべきだ。

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