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日本流通新聞11月28日付紙面から

社説:運行記録計 義務づけ拡大は慎重に

 国土交通省が営業用トラックへの運行記録計(タコグラフ)義務づけ範囲拡大を打ち出した。
 同省が2年前にまとめた「事業用自動車総合安全プラン2009」に盛り込まれていた施策で、当初は長距離運転が常態化しやすいとして、車両総重量7t以上8t未満の車両に拡大し、その後中長期的にさらなる拡大を検討する予定だった。
 ところが、同省が2010年度に調査を行ったところ、最大積載量1t以上のトラックに長時間運転、重大事故発生状況等が一様に多いことが判明したため、最大積載量1t以上、車両総重量では3.5t以上の小型トラックにまで一気に義務づけ範囲を拡大する方針を示した。
 現在は車両総重量8t以上または最大積載量5t以上の大型トラックに装着が義務づけられているものを大幅に拡大するもので、営業用トラックのほぼ全車両に装着を義務づけようとする案だ。
 義務づける運行記録計はデジタル式に限定する考えで、今後の検討では義務づけを新車にとどめるか、使用過程車まで適用するのかという点と施行時期などが論点としてあげられている。
 値段が下がってきたとはいえ、デジタルタコグラフは車載器だけで1台10万円程度する。車両総重量3.5t以上8t未満の使用過程車は50万台程度とされ、全営業用トラック台数136万台の4割近くを占める。この範囲の使用過程車すべてに義務づけた場合、業界の負担は車載器だけで500億円に及ぶ計算だ。
 義務づけ範囲が想定より広範囲であることから全日本トラック協会は慎重に検討しており、場合によっては再考を求める構えだ。
 デジタコは、運行管理の基礎的ツールだが、ただ装着しただけでは何の効果も生まない。速度や運転時間などのデータを解析し、問題があれば運転者の運転行動を改善するなど運行管理面で役立てて初めて効果が現れる。
 さらに、必要なのは車載器だけではなく、事務所側でのパソコン、解析用ソフト、カードリーダーといった機器類に加え、データ解析のための人員も配置しなければならず、相当の費用負担となる。荷動きが減少し運賃水準が低迷する中で、業界の過半を占める小規模事業者がどこまで対応できるのか、懸念が残る。
 業界関係者からは早くも「範囲拡大は時期尚早だ」との指摘が出ている。規制緩和後の課題である最低車両台数引き上げや適正運賃収受方策の検討が宙に浮く中で、「先にやるべきことがあるのではないか」といった声すら聞こえる。

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