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日本流通新聞9月26日付紙面から

社説:日本の秀逸さを海外へ

 トラック運送業の中国進出を国土交通省と全日本トラック協会が連携して支援することになった。
 トラック運送業の海外進出は、国土交通省のトラック産業将来ビジョン検討会が昨夏まとめた中間整理で打ち出されたもので、中国、インドなど著しい経済発展を続けるアジア各国への日系企業進出に伴い、高品質なトラック輸送に対する需要が高まっていることに応えられないかという問題提起だ。
 急激な円高や電力不安、増税などを背景に、今後も日本国内の産業空洞化が進展することは必至の情勢で、物流業も大手を中心に海外への展開を進めている。
 国交省の将来ビジョン検討会中間整理では「現地のトラック運送事業者では提供できていない輸送サービスを、我が国の優れた人材、車両、システム等のパッケージで提供するなど、十分な差別化戦略を構築していくことが重要」と指摘されている。
 中国では2001年のWTO加盟を機に市場参入規制が緩和され、明治大学の町田講師の調査によれば、今年3月現在で446社の物流事業者が中国に進出している。その4割強に当たる196社が上海に集中している。
 中国への進出に当たっては、事業許可や法人設立などの法的手続き、ビジネス慣習の違いなど、留意すべき点は少なくない。このため全ト協では、こうした手続き上の留意点や中小運送事業者の進出事例などを盛り込んだ「中国進出に当たっての手引き」を年内にも作成する。
 全ト協ではすでに中国での現地調査を行っており、進出している日系運送事業者、日系荷主企業などへのヒアリングを行っている。
 一方、国土交通省も中国国内事情調査を進めるとともに、全ト協の手引き作成を待って日本で海外進出セミナーを開き、意欲のある事業者を募って年度末の来年3月にはミッション団を派遣する計画だ。
 経営基盤が必ずしも盤石ではない中小、中堅の事業者にとって、大きな投資を伴う進出はリスキーだ。このため、将来ビジョン検討会中間整理でも「すでに進出している運送事業者の協力会社として需要を確保したうえで新たな需要を求めて進出することもリスクヘッジの視点から重要だ」と指摘している。
 日本のトラック運送業は、高度な運行管理や安全教育など、日本ならではのきめ細かいノウハウを蓄積している。こうしたノウハウを中国をはじめとするアジア各国で提供し、日本のトラック産業の秀逸さを広めてほしい。

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