日本流通新聞  
スペーサー


最新ニュース

日本流通新聞9月12日付紙面から

社説:原価計算が重要だ

 国土交通省に設置された最低車両台数・適正運賃収受ワーキンググループが今年3月以来半年ぶりに開かれ、議論を再開した。
 前回の会合直後に東日本大震災が発生し、会議を主催する国土交通省自動車局貨物課は緊急輸送業務に忙殺され、ワーキングの検討作業も一時中断を余儀なくされた。会議の冒頭あいさつした同省の中田自動車局長は「待望の再開だ。今日以降、最低車両台数と適正運賃収受についての議論を加速させていきたい」と検討促進に意欲を示した。
 会議では、適正運賃収受に関する実態調査結果が報告され、それに基づいて議論が行われた。事業者代表委員、労働組合関係委員は、標準運賃の発動や最低運賃の提示のほか、下請け規制や3PL規制など国に対して制度面での対応を求めたが、学識経験者委員からはトラック事業者による原価計算の徹底や契約の書面化などにより荷主との交渉力を高めていくべきとの指摘があった。
 1990年の物流2法により、事業免許制が許可制に、運賃認可制が届出制にそれぞれ規制が緩和され、その後新規参入の劇的増加もあって運賃水準も下落。トラック事業者は厳しい経営環境に置かれている。
 その反動で規制を強化すべきとの意見が業界内で高まり、今回のワーキンググループでの検討が進められるようになった。ただ、国土交通省では「運賃契約は非常に多様化していて、大変難しいテーマ」(中田局長)と運賃について国の制度面での対応は困難との考えを示唆しており、単純に規制強化の方向へ舵を切るということは期待しにくい。
 興味深かったのは、運賃に関する国交省の実態調査結果で、トラック事業者の原価計算実施率が約3割で、契約の書面化率が約4割という点だ。また、巷間、下請け多層構造の進展が運賃下落をはじめ様々な問題を引き起こしているといわれるが、実態調査の結果では、5割強の事業者が真荷主と直接取引をしており、物流子会社との取引が1割強、元請けトラック事業者との取引が2割強という点も意外だ。
 約3割の事業者が原価計算を実施しているとの調査結果については、評価が分かれるかもしれないが、その多くが荷主との運賃交渉に役立てていることを考え合わせると、原価計算は適正運賃収受に向けた有力な手段の一つといえる。
 荷主から一方的に運賃を押しつけられるのではなく、賄うべき原価を自ら積み上げ、「自分の商品の値段を自分で決める」事業へと発展させるためにも、原価計算への取り組みが重要だ。

原価計算システムのご案内はこちら

原価計算システムサポートはこちら