景況悪化に思い切った対策

帝国データバンク(TDB)が10月に実施した「景気動向調査」によると、景気DIは3カ月連続で悪化した。業界別では「製造」や「小売」、「サービス」、「運輸・倉庫」など10業界すべてが2009年12月以来、10カ月ぶりにそろって悪化した。
 なかでも、円高の進行や外需の減速で「製造」は食品や衣料、電機、機械、自動車関連をはじめ全12業種が2008年以来、1年10カ月ぶりに悪化したことから、TDBでは「国内景気は踊り場局面に入っている」と判断している。
 日通総合研究所がまとめた「企業物流短期動向調査」(企業物流短観)によると、製造業と卸売業の国内向け出荷量『荷動き指数』の10〜12月見通しは、15業種のうち過半数の8業種がマイナスとなり、一部を除いて明るさが窺えない。
 エコカー補助金の終了による反動減もあって、『荷動き指数』は前期(7〜9月)のプラス15から14ポイント減のプラス1と水面まで急降下を見込む。
 全日本トラック協会がまとめた「トラック運送業界の景況感」によると、10〜12月期の見通しは、判断指標が前期(7〜9月期、マイナス45)より15ポイント悪化のマイナス60だ。とくに機械関連貨物の急速な悪化が予見されるなど、先行きへの不安が強まっている。
 景況感が「悪い」と判断した理由について、外食チェーン店舗への食材配送業務を行っているトラック運送事業者は「明らかに物量(店舗からの食材発注量)が落ちている」、食品物流事業者は「顧客からの運賃や倉庫保管料などの値下げ圧力が継続」、一般貨物運送事業者からは「内需低迷により輸入減や円高による輸出競争力の低下で、物流量が減少している」といった声が聞かれる。
 政府は10月26日に2010年度補正予算案を閣議決定したが、一刻も早い予算の執行に期待がかかる。だが、国内景気は回復力が急速に弱まっており、このまま現状を放置することはできない。
 だからこそ、全日本トラック協会は10月4日の全国トラック運送事業者大会で、中西英一郎会長が業界の総意として「菅(直人)改造内閣には、経済の回復へ思い切った対策の推進」を求めた。
 景気動向指数を見る限り、一部では「国内景気は踊り場局面が見込まれるが、これまでの回復はやや打ち消され、リーマン・ショック時を下回る水準に逆戻りする可能性もある」との認識もある。これは、決して「脅し」ではない。
 政府には、こうした危機感のもと、思い切った景気対策を要請したい。

(日本流通新聞2010年11月1日付)