新たな経済対策を期待

全日本トラック協会が四半期ごとに実施している景況感調査で、業界の景況感判断指標が5期ぶりに悪化に転じた。
 金融危機の影響で09年1〜3月期にマイナス133と過去最悪水準をつけて以来、4四半期連続で顕著な改善傾向を示していたが、10年4〜6月期は前期比4ポイントと小幅ながらも悪化に転じ、業界の景気回復に足踏み感が出てきた。
 原油高を背景にじわじわと上昇を続ける燃料価格も気になる。一昨年の高騰後、09年3月には全ト協調査で1㍑当たり72・85円まで下落していた軽油のローリー価格(消費税抜き)は、6月には93・13円へと20円以上上昇しており、トラック運送事業者の営業利益を圧迫している。
 日本通運の4〜6月期決算では、軽油単価が前年同期に比べ17・35円上昇したため、11億円の利益が消失したという。日本ロジテムでは日本国内とベトナムでも燃料価格高騰の影響を受けて営業減益を余儀なくされ、大宝運輸も燃料費の上昇を減益要因の一つにあげている。
 ニューヨーク原油価格は、今年5月20日に1バレル64・24ドルの底値をつけて以降、再び上昇傾向にあり、8月に入り80ドル台前半まで上がってきている。
 全ト協の景況感調査によると、とくに特積み貨物の指標悪化が目立つ。特積みの売上高指標は前期比5ポイント悪化のマイナス25だったが、営業利益指標は20ポイント悪化のマイナス42へと落ち込んでいる。宅配貨物もこれらの指標が2ケタの悪化幅となっている。
 一方、荷主企業を調査対象とした日通総研の4〜6月期物流短観では、国内向け出荷の荷動き指数はプラス14となり、プラス幅が拡大した。今年に入ってからの荷動き回復を裏付けたが、金融危機以降の大幅減に対する反動増の色彩も強く、先行きについて不透明感が残る、と指摘している。同研究所の佐藤信洋主査も「景気が踊り場に差し掛かりそうな雰囲気」と話している。
 このようななか、国土交通省はトラックなど事業用自動車向けのエコカー補助を予定より2カ月早めて打ち切った。補助金需要が旺盛で、申請額が予算額に達したためだが、受付終了で各方面への悪影響が懸念される。なにより、今後販売が本格化するポスト新長期規制適合車は大型車の価格が100万円前後値上げとなるため、トラック事業者の車両代替には困難が伴うことになる。
 財政厳しい折ではあるが、せっかく回復傾向にあった景気を再び冷やさないためにも、政府には新たな経済対策の立案を期待したい。

(日本流通新聞2010年8月9日付)