政治の不安定、国民には不幸

11日投開票の参院選で民主党が大敗し、永田町は一気に政局含みの展開となった。
 民主党は、目標議席数に遠く及ばない惨敗で、菅首相は今後厳しい国会運営を迫られることになり、新政権は発足後1カ月余りで試練を迎えた。
 菅氏の党代表としての任期は今年9月まで。小沢グループの動きも含めて、9月の代表選がまずは注目される。
 とくにトラック運送業界を取り巻く諸問題は、政治情勢の影響を少なからず受ける。高速道路料金問題、暫定税率問題、交付金制度の見直し問題しかりである。
 高速道路の新料金を巡っては、今年4月に前原国交相が発表した、トラックの上限料金を5000円とする料金案にトラック運送業界が反発。民主党内でも「実質値上げだ」との声が強まり、当時幹事長だった小沢氏が待ったをかけた経緯がある。
 高速新料金については、関連法案の国会審議を通じて見直す方向だが、肝心の法案審議は通常国会で行われず、先送りとなっている。一部報道で関連法案の成立を待たずに実施すると伝えられたが、前原氏は16日の会見でこれを否定した。
 ガソリン税などの暫定税率問題と交付金問題は密接に絡み合う。昨年末は、小沢氏の重要要点で暫定税率維持となり、交付金も現行通り継続されたが、今年末の税制改正審議では、ガソリン、軽油の燃料課税については地球温暖化対策税への衣替えが俎上にのぼる見込みで、予断を許さない。
 軽油引取税の営自格差をその根拠とする交付金制度も当然ながらこの暫定税率問題の帰趨に大きく影響を受ける。とくに、今年5月には予想外にも事業仕分けの対象となり、その制度としての「建付け」が問題視されたこともあり、制度見直しの検討も進められるとみられるが、これも微妙に政治的な影響を受けよう。
 中国の言葉に「治極まれば乱になり、乱極まれば治に入る」という言葉があるが、今の日本の政治はまさにこの状況にあるのではないか。昨年は自民党政権が「治極まって」崩壊し、衆院選で民主党が大勝して政権交代が起きたが、この参院選での民主大敗をみると、当面「乱」が続くのではとも見える。「乱極まる」には、政界再編などの政局を経なければならないのだろうか。
 いずれにしても、政治が不安定であることは、国民にとって不幸なことだ。景気はようやく回復の兆しを見せ始めているが、政治にも早く安定してもらいたい。

(日本流通新聞2010年7月19日付)