素早く動いた民主議連

民主党トラック議員連盟の奥村会長らが4月30日、平野官房長官に対し、高速道路の新料金制度を見直すよう申し入れた。同月28日に開いた議員連盟緊急総会で、トラック運送業界の代表はもとより、出席した議員からも異論が相次いだことを踏まえて要望したもので、大型連休前ということもあろうが、議連総会から2日後という素早い動きだ。
 要望書では、実質値上げとなる新料金により高速道路の利用率が低下すれば、一般道での渋滞や環境問題、交通事故の増大など国民生活への影響も懸念している。
 奥村会長らは、議連総会で異論が続出したことを紹介し、末端のトラック事業者にとってこの問題は死活問題だ、と訴えた。これに対し平野官房長官は鳩山首相に伝えることを約束するとともに、国権の最高機関である国会の国土交通委員会で意見が出たものは、見直しに反映させていく考えを示したという。
 前原国交相が発表した、上限料金制を中心とした新たな高速道路料金制度を巡っては、小沢幹事長が4月21日の政府・民主党首脳会議で見直しを求め、これに反発した前原国交相が「現時点では見直さない」とするなど、小沢VS前原の様相を呈していた。
 小沢幹事長は26日の定例会見で「無料化を掲げて選挙に勝利し、政権を担ったのに、実質値上げというそんなバカなことがあるかという声が充満している」と見直しを求めた理由を説明している。
 28日に開かれた民主党のトラック議員連盟緊急総会で、全日本トラック協会の中西会長は「物流コストを引き下げるということで期待していたが、かなりの実質値上げであり、全然話が違う、と全国から非常に強い反発が出ている」とトラック運送業界の声を伝えた。
 中・大型車5千円という上限制では、9割の事業者が値上げとなり、しかも「激変緩和措置」が切れる来年度以降は、利用距離によっては2倍以上の大幅値上げとなるケースも出てくる。28日の議連総会には、綿引東ト協専務理事も出席し「輸送距離が短い中小や都市部の事業者にとって、大きな負担となる」と東京業界の実情を訴えた。
 出席した民主党議員からも異論が相次ぎ、議連として政府、党に申し入れていくことを決めていた。
 今後は、衆参両院の国土交通委員会での道路整備財政特別措置法(財特法)改正案審議の中で、どのような議論が行われるのかが焦点となるが、審議入りの目途は立っておらず、国交省が目指す6月実施は困難になりつつある。

(日本流通新聞2010年5月3日付)