露呈した財源問題

新政権の下での初めての税制改正作業が本格化してきた。各省庁は今月30日の要望提出締め切りを控え、関係団体からのヒアリングを行い、今後要望内容を精査していく。とくに、政策減税など租税特別措置については、政府税調がゼロベースでの見直しを打ち出しており、各省の要望段階で見直され、さらに税調の場で見直されるということになる。
 こうしたさなか、全日本トラック協会の中西会長は精力的に陳情活動を繰り広げている。前原国交相、原口総務相、赤松農水相と連日、新政権の閣僚と会談し、トラック運送業界の窮状を訴えるとともに、来年度税制改正要望に理解を求めている。
 全ト協の税制改正重点要望事項は、自動車関係諸税の簡素化・軽減、高速道路等通行料金の大幅な引き下げおよび営業車特別割引の創設、環境税等新たな税負担となる新税創設反対、中小企業の法人税率引き下げ、中小企業投資促進税制の恒久化、運輸事業振興助成交付金の継続だ。
 鳩山政権は、マニフェスト(政権公約)に自動車関係諸税の暫定税率廃止、高速道路の無料化、中小企業法人税率引き下げなどを盛り込んでおり、トラック運送業界の要望と符合する事項が少なくない。
 ところが、政府税調、とりわけ財務省からは最近、このマニフェストの実現に疑問符が付くような発言が相次いでいる。峰崎副財務相は22日の税調終了後の記者会見で、中小企業の法人税率引き下げについて「来期(に実施する)と結論を申し上げるわけにいかない」と述べ、実施時期を先送りする考えを示唆している。
 さらに、暫定税率の廃止についても同副財務相は20日の税調終了後の記者会見で「暫定税率廃止に当たり、環境税の導入を将来的に考えなければならない」と述べ、暫定税率を温暖化対策税に振り替えることも検討していく考えを示した。
 いずれも、来年度概算要求が過去最大の95兆円にまで膨らむ一方で、税収減などもあって深刻な財源不足に陥っていることが背景にある。当初から懸念されていたマニフェストの財源問題が露呈したかたちだ。
 今年度補正後の予算では、歳出に占める税収比率は50%を下回る。国債発行残高も592兆円におよび、「国債マーケットの信任に耐えうるようなことをやらないと、予算編成どころではなくなる」(野田佳彦副財務相)という心配もある。
 マニフェストと財政規律の狭間で揺れる鳩山新政権だが、暫定税率廃止を棚上げしたのでは、「公約違反」のそしりは免れまい。

(日本流通新聞2009年10月26日付)