概算要求と総選挙

霞ヶ関は8月下旬から来年度概算要求の季節を迎える。各省庁が自らの政策を実行するために必要な予算を財務省に要求するもので、年末には財務省が要求に対する回答(内示)を行い、国全体の来年度予算政府案ができあがる。
 国土交通省自動車交通局関係の予算は近年、安全と環境の2つが大きな柱立てとなっている。従来は環境の比重が高かったが、最近は安全にも予算面で脚光が当たるようになってきた。
 従来財政当局は、「自動車運送事業者が安全対策に取り組むのは当然のこと」として予算の割り当てには渋かった。最近は「国民の安全・安心」が大きな関心事となり、政策テーマとなってきた。自動車に関して言えば、毎日のように事故のニュースに接し、国民にとっても最も身近に「安全・安心」を感じる分野の1つとなっている。
 歴代の首相は政府をあげて交通事故死者の削減をめざし、麻生首相も今年1月、今後10年間を目途に交通事故死者数をさらに半減させる決意を表明した。首相は同時に飲酒運転の根絶も掲げた。
 これを受けて、国土交通省は今年3月にまとめた「事業用自動車総合安全プラン2009」で、事業用自動車の事故死者数を10年間で半減させる数値目標を初めて設定し、事業用自動車の飲酒運転についてもゼロとする目標を打ち出した。
 国土交通省自動車交通局が今月末に提出する来年度概算要求でも、安全対策がより大きな政策テーマとなることは間違いない。その一環として、デジタル式運行記録計、映像記録型ドライブレコーダー、高機能型アルコールチェッカーという安全機器を導入する事業者向けに、補助制度を新たに要求する方針だという。
 デジタル式運行記録計については、EMS(エコドライブマネジメントシステム)用機器としての補助制度があるが、来年度は安全対策の視点から補助制度が設けられることになりそうだ。
 これらの機器に対する補助制度が創設されれば、事業者の安全確保への取り組みがさらに進むことが期待できる。
 今年は、概算要求締め切り日の8月末に、奇しくも政権選択をかけた総選挙が行われる。各党は相次いでマニフェストを公表し、政策競争が盛んになっているが、国民にとっても望ましいことである。
 もちろん自動車の安全・安心だけに限らない。教育も福祉も同様だが、どの政党が政権を取っても、国民が安心して暮らせる安全な国をめざしたかじ取りを期待したい。

(日本流通新聞2009年8月10日付)