業界団体と事業者の利益

今月30日投開票の総選挙に向けて民主党がマニフェストで打ち出した「高速道路料金の無料化」と、ガソリン税、軽油引取税など「暫定税率廃止」は、トラック運送業界にとって、事業者団体の利益と事業者の利益が必ずしも一致しないケースになっている。
 高速道路料金の大口ユーザーである事業協同組合とって「高速道路無料化」は、大打撃になる。
 組合は、個々の事業者のトラックが高速道路を走った時、その料金をまとめて大口ユーザーとして高速道路会社から料金を割引してもらい、個々の事業者には一定の取扱手数料を加算して請求している。
 事業者は、組合に手数料を支払っても自社で支払うより安い。だから組合も事業者も「利益」は一致していた。だが、「高速道路無料化」は、事業者にとっては大きな「利益」だが、組合は手数料収入がゼロになり「損」することになり、利益は相反する。
 このほかに、国土交通省は高速道路無料化の影響として、「高速速度サービスが担保できなくなる」(谷口事務次官)と、渋滞の激化を懸念している。
 渋滞の激化については、トラック運送ドライバーなどを組織する運輸労連の山浦正生委員長も「乗用車の上限千円で渋滞が頻発しており、すべての車両を無料化することは問題だ」と指摘する。
 民主党の支持母体でもある労組トップが「(無料化は公共輸送の)トラックや福祉車両に限るべきだ」という背景には、渋滞の激化が長時間労働につながるためで、単なるエゴ論で片付けらないだろう。
 一方、「暫定税率」設定の見仮りとして創設された、運輸事業振興助成交付金制度は、暫定税率の撤廃でその根拠を失う懸念がある。
 現在、トラック運送業界が実施している、公益的「安全・環境」対策事業は、ほとんど交付金を活用しているが、これが宙に浮いてしまう。会費の値上げで対応することになるが、それが可能なことであろうか。
 確かに、暫定税率が撤廃されれば、燃料は安くなる。事業者にとっては、歓迎すべきことだろう。だが、その一方で荷主からの値下げ圧力に脅えなければならない懸念もある。
 そもそも論になるが、ライフラインでありインフラに位置づけられる物流を滞らせてはならない。物流の9割以上を担うトラック輸送が社会と共生していくためには、交付金は必要不可欠なものだ。
 もし「暫定税率」撤廃ということになっても、交付金に代わる手当てをしなければ、物流は混乱する。

(日本流通新聞2009年8月3日付)