景気回復まで我慢の時

物流各社の09年3月期決算発表が始まった。各社とも昨秋以降、とくに今年1〜3月の業績が厳しく、10年3月期の見通しも企業によって見方が分かれた。
 確かに昨今の経済情勢のなか、先行きを予想することは困難を極めよう。業績予想を担当する経理部長泣かせの経済状況といえる。
 物流大手各社の業績予想も見方が大きく分かれた。日本通運は、09年3月期下期と同様の厳しい状況が今期も続くと想定し、2期連続減収減益を見込んだ。ヤマトホールディングスはほぼ横ばい見込みだが、日立物流とセンコーは見方が分かれた。
 3PLが好調な日立物流の今期業績予想は、7年ぶりの減収減益予想で、極めて手堅い「保守的」な数字となった。今期の営業利益予想は前期比3割減の100億円だが、今年1〜3月期の営業利益が29億円だったことを考えると、それよりさらに悪くなるという想定だ。
 これに対して同じく3PLを得意とするセンコーの業績予想は増収増益と強気だ。M&Aの効果が通期で現れることや、新規受注の増加を見込んでいる。日立物流でも3PLの新規受注は好調で、企業の業績悪化を受けて、ソリューション型の物流改革に対する需要は底堅そうだ。
 経済の先行きを見通すのは難しい情勢だが、ここへ来て諸指標には明るい材料も出てきている。3月の鉱工業生産指数は前月比1・6%上昇し、6カ月ぶりに前月を上回った。同出荷指数も同様に1・4%上昇し、製造工業生産予測も4月が前月比4・3%、5月が6・1%の上昇見込みだ。輸出の持ち直しと在庫調整の進展が指摘されており、なお低水準ながらも上向きが期待できる。
 株価も7日の東京市場で4カ月ぶりに年初来高値を更新した。米国の金融システム不安が後退したことや企業業績の底入れ感が出始めたことが指摘されている。
 業績悪化の象徴だった自動車や電機の株価上昇率が高く、世界景気の底割れ懸念が和らいだことを表している。
 トヨタ自動車の渡辺社長は、8日の決算発表の席上、今後の見通しに触れて「将来的に市場は必ず回復する」と述べた。トヨタはグループ全体で1000万台の生産能力を有し、今はその余剰感も強いが、現時点で工場の閉鎖などは考えていないと同社長は強調。生産ライン編成の見直しや残業時間の抑制など人と設備をやりくりして凌ぐ考えを示し、「我慢の時」だと述べている。
 物流企業は自ら需要を作り出すことは難しいが、様々な工夫で経営効率を高め、景気の回復を待ちたい。

(日本流通新聞2009年5月11日付)