食品ロスのさらなる削減を

社会的問題となっている食品ロスの削減に向け、農林水産省が全国一斉に商慣習を見直す運動を始めた。小売り事業者に納品期限の緩和を促すもので、人手不足が深刻化する物流現場の環境改善にもつなげたい。
食品業界では賞味期間の3分の1以内で小売店舗に納品する慣例がある。納品できないものは廃棄となる可能性もあり、食品ロスに拍車をかけることから、この商慣習の見直しに自発的な動きを求めるものだ。
農水省では加工食品の納品期限のさらなる見直しについて、今年7月に経済産業省と連名で通知文書を卸小売り団体長に発出したほか、個別企業にも説明を進めている。
先ごろ公表した小売事業者の納品期限緩和の取り組み状況では、94事業者が「推奨3品目」はじめ実施あるいは予定しているとの回答があり、総合スーパー、コンビニエンスストアではシェアが約9割と全国大手チェーンではほぼ浸透したとみられる。食品スーパーが25%とまだ全国的には伸び代があり運動で広く呼び掛けていく考えだ。
食品ロスは年間で643万トン発生していると推計される。これを削減するため、国は食品関係の製造業、卸売業、小売業によるワーキンググループによる実証実験を進めており、各段階で課題を共有していく動きにある。
今般の運動では、メーカーにも賞味期限の年月表示化を促し、消費者にも啓発活動を行う。食品ロス削減に取り組む企業やその内容を知ってもらい、応援、後押しを求めるもので、物流改善につながることも周知させたい。
食品業界では一部大手メーカーが繁忙期に行っていた受注日の翌日納品を、翌々日にする取り組みが本格化している。着荷主である卸問屋の理解が進めば、サプライチェーン全体へ物流改善が広がってくるだろう。
メーカー側もより踏み込んだ対応がみられる。
江崎グリコが原材料を納入事業者各社と共同で一括管理する拠点センターを稼働させた。複数の事業者からの原材料の納入作業と、その管理をセンターに集約させ、必要な原材料を各工場に配送するものだ。
食品輸送は手荷役作業、小口多頻度輸送が多く、取扱いを敬遠される事例も出てきている。同社の取り組みはドライバー不足の要因の1つである小口多頻度化を緩和するものとして注目される。
消費者も巻き込んだ食品ロス削減運動も、食品業界の物流改善へ大きなインパクトを与えるものと期待したい。