適正転嫁への環境整備に期待

中小企業が労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分を適切に転嫁できるよう環境整備を図るため、政府が法執行の強化など施策パッケージとして対策をまとめた。
岸田文雄内閣の「新しい資本主義」の考え方に基づき、成長と分配の好循環の形成を進める上で、中小企業が賃上げの原資を確保できるよう措置を講じる。原油価格の高止まりをはじめとするエネルギーコストや原材料価格の上昇懸念が強まる中で、施策の実効性が求められる。
年明け後も大手製造業や卸売業など製品値上げ表明が後を絶たない。原材料価格と輸送コストの上昇を企業努力だけでは吸収できない状況が続く。製品値上げは家計への負担が増す一方、取引関係においても中小、下請けへのしわ寄せが及ばないようしっかり注視する必要がある。
12月27日に首相官邸で行われた「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化会議」では5経済団体、22事業者団体のトップが参加、意見交換し、出席した全日本トラック協会の坂本克己会長は適正な運賃・料金、燃料サーチャージの収受を強く要請した。
中小零細企業が9割以上を占めるトラック運送業界では足元の燃料高騰が重く経営にのしかかっており、坂本会長も予てから「差し当たっての今日、明日が厳しい」と訴え続けている。
今般、政府挙げて産業界全般において価格転嫁をしやすくする施策を示したことは、取引適正化の動きを大きく前進させる。
これを受け、事業所管大臣から関係事業者団体に対し、取引パートナーシップの構築と、その妨げとなる取引慣行、商慣行の是正など通知を行ったが、広範にかつ現場の末端まで深く周知を徹底させたい。
施策の1つには「買いたたき」など違反行為の疑いのある情報をサイトに報告する措置がある。トラック運送業界では荷主対策の深度化の一環として、輸送実態把握の意見募集を行っているが、各業界で取引是正にしっかり向き合い、中小・下請けが躊躇なく情報提供できる風土づくりが望まれる。
何よりスピード感だ。荷動きが一時より回復基調にあるが、燃料・材料高騰により収益回復は足踏み状態。全国中央会の11月景況調査からも運輸業の売上高指標は上昇を示すも、収益状況指標は小幅改善であり依然として低水準にある。高騰分の転嫁が進んでいない。
持続可能な経済を作るにも、取引事業者全体で価値を創出する仕組みと意識づけが必要だ。