過労死ワースト1の汚名返上を

トラック運送業の過労死等認定件数が、依然として業種別ワースト1であることが厚生労働省の2015年度「過労死等の労災補償状況」で明らかになった。

いわゆる「過労死等の認定件数」は従来、過労など脳・心臓疾患に関する認定件数だったが、一昨年11月に施行された過労死防止法により、うつ病など精神障害を含め、死に至らないケースを含めて「過労死等」と定義された。つまり、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患のほか、仕事による強いストレスなどが原因で発症した精神障害も「過労死等」になる。

2015年度の脳・心臓疾患による労災認定件数を業種別でみると、トラック運送業は前年度の77件から82件と5件増え、2位の総合工事業の16件に大きな差をつけてダントツだ。業種別の統計を開始した2009年度以降7年連続ワースト1だ。

また、2015年度の精神障害による労災認定件数もトラック運送業は36件と前年度(41件)より減少したが、2年連続ワースト1となった。2位は社会保険・社会福祉・介護事業の24件、3位は医療業の23件だ。

精神障害の労災認定要件は、精神障害発病前のおおむね6カ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められることとしており、具体的な「出来事」が定められている。

トラック運送業の36件を、この出来事別にみると、「1カ月に80時間以上の時間外労働を行った」が5件、「事故や災害の体験」が7件、「特別な出来事」が9件――の上位3つで約6割を占める。

「特別な出来事」とは、ドライバー不足による仕事内容・仕事量の変化など心理的負荷が極度のもののほか、発病直前の1カ月間におおむね160時間を超えるような連続勤務など極度の長時間労働があった場合としている。

脳・心臓疾患による認定を含め、トラック運送業がワースト1となっている背景に、長時間労働が原因になっていることがうかがえる。

国土交通、厚生労働両省は昨年5月、トラック取引環境・労働時間改善協議会を立ち上げ、長い間放置されてきたトラック運送業の長時間労働改善に着手した。中央のほか、各都道府県に地方協議会も設け、全国的に取り組みを進めている。

今年度からは、荷主と運送事業者が連携してドライバーの長時間労働を改善するパイロット事業を実施する計画で、すでに26都道府県で実施が確定し、13県で概ね確定しているという。「過労死等ワースト1」の汚名を返上するためにも、関係者の真摯な取り組みを期待したい。