生産性向上に取り組んだ年

今年も残すところあと2週間となった。

英国のEU離脱、米大統領選でのトランプ氏勝利など、予想外の出来事が相次いだ年でもあった。

今年の漢字は「金」だという。リオ五輪で日本人選手の活躍に沸いた日は記憶に新しい。4年後の東京五輪への期待も高まる。政治とカネ、マイナス「金」利導入などの意味もあるという。

トラック運送業界を中心とした物流業界では、依然として労働力不足、ドライバー不足が続いた。全日本トラック協会の調査によると、今年10―12月期の人手不足感は、過去最高水準にまで強まる見込みだ。

将来の担い手を確保しようと、国土交通省では今年を「生産性革命元年」と位置づけ、各分野の生産性向上に注力した。

物流についても、労働生産性(就業者1人当たりの付加価値額)を全産業並みに引き上げることをめざして、2020年までに2割程度引き上げることが目標とされた。

政府の動きとしては、トラック運送事業の長時間労働改善に向け、国土交通省と厚生労働省が協議会を設置して様々な取り組みを進めており、手待ち時間の解消など、結果として生産性の向上に結びつく施策が進められている。

大企業だけでなく、中小企業の賃上げを通じて経済の好循環を促そうと、首相官邸が主導して下請等中小企業の取引条件改善が進められ、トラック運送業も重点業種の1つとして脚光が当たった。

トラック運送事業を巡る諸課題の解決には、いずれも荷主の理解と協力が不可欠だが、政府全体のフレームでスポットライトが当たることが増えたため、国交省も経産省など荷主所管省庁に要請しやすくなった。

少ない人手で多くの荷物を運ぼうとの発想から、ダブル連結トラックの実証実験が始まり、自動運転によるトラック隊列走行にも期待が集まる。イオンと花王によるトラック中継輸送への取り組み、アサヒとキリンによる鉄道共同輸送など、いずれもドライバー不足に対応し、業務効率を高めようとする動きだ。

古くて新しい課題、適正運賃収受も生産性向上には欠かせない。国交省では、運賃問題を専門に議論する検討会を設置し、改めてアンケート調査を実施する方針だ。

原油価格が安値で安定し、物流業の経営には追い風が吹いた年でもあった。ただ、OPECによる減産合意で原油価格が底を打ち、折からの円安で国内燃料価格も上昇局面に入った。来る新たな年の価格安定を願ってやまない。