現場の実態を広く周知

国土交通省は自動車局の来年度予算概算要求で、トラック事業の働き方改革に向けた施策を拡充した。要求額は19年度予算比3割増の2億円。ドライバー不足が深刻化する中で、働き方改革の推進によるさらなる労働条件の改善に期待したい。
内容は輸送品目別の取り組みの強化、「ホワイト物流」推進運動の展開、長時間労働の是正に向けた調査事業である。
荷待ち発生件数の多い輸送品目別に昨年から荷主、運送事業者、学識経験者、行政による懇談会の場が設けられ、品目ごとに課題把握や改善策の検討が進められている。
既に懇談会を設置しているのは加工食品、建設資材、紙・パルプ。このほか荷待ち件数の多い品目(生鮮食品、飲料・酒、金属部品・金属加工品、宅配便・特積み貨物)も懇談会の設置を検討するほか、各地方の実態を踏まえた改善策の検討・検証や、好事例の普及・浸透を図る考え。取り組みを全国展開しサプライチェーン全体での物流改善を促すものだ。
長時間労働是正への調査事業では、6月から乗務記録への記載が義務づけられた荷役作業時間の状況を把握する調査も行う。コンプライアンス確保には、長時間の荷待ちを発生させないことが重要であり、現場の実態を広く周知、共有する必要がある。
一方、トラック輸送の効率化、労働環境の改善に向け、荷主などの企業から協力を得る「ホワイト物流」推進運動は4月から賛同企業の募集を開始、自主行動宣言を提出した企業は190社を超えたという。さらに運動の輪を広げるべく、荷主等への呼びかけや、荷主・物流事業者の取り組み事例の集約、セミナーなどを展開する。国交省幹部の発言からも「物流危機は運送事業者だけでなく、荷主側も自らのこととして危機意識が高まっている」と聞かれ、運動への期待の高さが伺える。
ポータルサイトに公表された賛同企業をみると、地域・業種で開きはあるものの各業界大手の賛同表明も相次ぐ。8月27日にはサントリーHDが運賃と料金の別建て契約などを盛り込んだ自主行動宣言を提出、「リードタイムの延長や荷待ち時間短縮などさらに取り組みを強化する」と持続可能な物流の実現に傾注する。
「ホワイト物流」推進運動はこうした荷主への理解を深め、最終的には国民全体の理解、協力を得る取り組みである。とくに消費期限やリードタイムなど生活に関わるところを分かりやすく伝える必要がある。そのためにも荷主とのより強い連携が求められる。