物流を産業競争力の源泉に

2040年の物流のあるべき姿として、国がフィジカルインターネット(PI)の実現へロードマップを年度内に策定する。物流、荷主団体関係者、学識経験者による会合が立ち上がった。オールジャパンで意識を高めていける道筋を示してほしい。
人手不足で物が運べない物流危機をどう回避するかが足元の課題だが、その先の将来像を展望する壮大な議論だ。6日の初会合では委員それぞれの立場で主張、意見が交わされ論点整理は難しい。それでも「抽象論的な議論になろうが、まず意識改革から」(事務局)という場づくりに大きな意義がある。
6月に総合物流施策大綱が決まり、年度毎に指標の進捗を確認して施策を講じる方向が示された。柱となるDX、標準化に向けて官民物流懇談会が発足、パレットから議論が始まり、物流危機に対し産官学連携が着実に前進する。コロナ禍の対策は効率化、DXを後押しし、エッセンシャル事業者として社会の物流に対する期待もフォロー。5カ年の大綱とともに、その先のビジョンを掲げるのは時宜を得ている。
DXがようやく浸透しつつある中でPIをどう解釈するか。インターネット通信の考え方を物流に適用した究極の効率化、共同輸配送システム構想とされるが、トラック運送業をはじめ中小零細事業者が多くを占める物流業界で分かりやすい指針を描いてほしい。
やはり入り口としては荷主のさらなる協力、理解につきる。積載率向上、共同輸配送について、水平・垂直連携の在り方が議論、実証されているが、確実にプロトタイプとして全国展開を推し進めるにも、こうした議論の場が必要だろう。
初会合でも中小事業者や地方への浸透が重要との意見があった。「地方の現場ではまだまだ物流危機への認識がうまく伝わっていない」との指摘もある。ドライバー不足を自社の経営課題ととらえていなければ、PIのコンセプトを広げるのは困難だろう。
人手不足とともに昨今のEC拡大にどう対応するか。消費者ニーズに対し物量は変化する。〝送料無料〟表記は物流の価値を下げるものであり、過剰サービスは物流全体の非効率を招く。対荷主、その先にある対消費者の視点による課題解決も必要だ。
2050年カーボンニュートラルに対して大胆な目標が掲げられた。脱炭素化が成長戦略の柱となっている。物流も産業競争力の源泉となるよう、足元の危機を克服し前向きに臨める姿を描きたい。