新制度の迅速な周知を

運転者職場環境良好度認証制度「働きやすい職場認証制度」の申請受付が9月16日から始まる。いわゆる〝ホワイト経営〟の認証として国が制度設計を議論してきたもので、コロナの影響もあり当初計画より遅れていたが、認証実施団体の日本海事協会が申請案内受付、審査、認証を行う。
 足元ではコロナ禍によるECの急増で宅配運送が逼迫する。ドライバーの労働条件、環境改善は待ったなしだ。年960時間以内の罰則付時間外労働上限規制も2024年4月に控える。こうした観点からもまず認証制度の迅速な周知と普及促進への取り組みが肝心だ。
 制度の目的は、大きくは認証事業者の労働条件、環境を求職者が容易に確認でき就職を促進することと、事業者が認証基準を満たすために様ざまな改善を図ることでより働きやすい労働条件、環境を実現させることだ。
 認証は3段階あり、初年度の申請は一つ星のみの試行実施。一つ星を取得しなければ二つ星、三つ星は取得できない。まず一つ星の取得で制度を浸透させ、労働環境に関する基本的な取り組みが定着し、中小事業者にも取得可能という運営の基本方針を広く認識してもらう必要がある。
 制度を審議した国の「自動車運送事業のホワイト経営の見える化検討会」報告書が昨年6月に取り纏められたが、その後状況を踏まえ必要な改善を行った。認証項目の一部大くくり化や行政処分実績の対象期間の短縮、提出書類の簡素化など、当初よりもハードルを下げて間口を広げた格好だ。多くの事業者に活用してほしい。
 事業者が働く環境基盤をしっかり整えた上で、さらに改善へとステッププを促す制度のプロセスは実効性が期待できる。二つ星・三つ星の評価項目は今後の審議予定で継続的に制度改善を行うという。ここで先駆的な取り組みの見える化や、事例の共有などで全体が底上げし、業界の魅力度が高まるスパイラルアップの好循環が望まれるところだ。
 一方、コロナ禍では医療機関と同様エッセンシャルワーカーとして物流業界へ大きな期待が向けられるが、心ない誹謗中傷の声も聞かれる。業界への正しい理解へ継続的な働き掛けが不可欠だ。 
 認証制度が事業者の改善活動を促す一方、昨年度から賛同企業募集を始めた「ホワイト物流」推進運動は、物流の効率化と誰もが働きやすい環境へ、荷主や国民へ協力を求めるもの。これら2つのホワイト活動の相乗がトラック運送業界の地位向上につながるものと念じたい。