新たな価値観と向き合う

新型コロナウイルスの感染拡大は企業経営を圧迫しながらも、物流業界はこれを契機とした生活スタイルの変化や新しい価値観とどう向き合い、対応していくかも大きな課題だ。
緊急事態宣言が首都圏1都3県と北海道を除き解除され、徐々に経済活動が再開されつつあるが正常化には程遠い。トラック運送事業者は物量の減少、売上低迷が深刻である。こうした厳しい環境下においても〝新しい生活様式〟が浸透することによる変化、ニーズへの対応が求められる。
宅配では「置き配」の動きが活発になりそうだ。EC市場の拡大で宅配便の取扱個数が増加する一方、労働力不足による再配達率の削減から置き配が注目される。感染拡大防止の観点からも対面手渡しでない手法として、需要増が想定される。
18日からは佐川急便が「指定場所配送サービス」を始めた。コンビニでの受け取りや、宅配ロッカーの活用などを提案してきたが、玄関先や車庫内といった受取人指定の場所に届け、その際には同社のセールスドライバーが状態撮影を行うという手法だ。
日本郵便やアマゾンジャパン、楽天なども昨年から置き配の実証を行い、各社が構成員となった国の置き配検討会が3月に内容を取りまとめている。事例を紹介しながら課題解決の方向を示すが、課題の1つである「認知度向上」はコロナの影響で世の関心が広まった。盗難や消費者保護などリスクの問題も業界全体で情報を共有しながらニーズに対応できる環境整備が望まれる。
官民連携による未来投資会議の14日会合では低速・小型の自動配送ロボットが議題にあがった。非接触型の配送ニーズが高まり、スーパー・飲食店や小包の配送拠点から周辺の消費者宅への配送、また定期的な集荷・運搬業務での新たな配送サービスを想定したものだ。
海外では公道走行で配送に用いる事例もあるが、日本では低速(歩道走行時速6㌔以下)で小型の無人自動配送ロボットが制度上位置づけられておらず、公道実証も行われていない。
4月に「近接監視・操作型」に限り歩道を含めた公道実証の枠組みが整備された段階であり、継続的なサービスが可能となるよう「遠隔監視・操作型」の公道実証を早期に行い、公道走行を実現すべきとしている。
こうした動きは物流事業者にとっても人手不足の解決と生産性向上に寄与する。技術革新とともに事業者間の連携も含め創意工夫で新たな価値観に前向きに臨みたい。