全体最適を広く浸透

日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が24、25日に東京で全国大会を開き、産官学関係者がこれからの物流・ロジスティクスについて認識を共有した。
労働力不足が深刻化しており、サプライチェーンを俯瞰した全体最適の重要性がクローズアップされる。JILSは今大会も含め10月をロジスティクス強調月間と定め、各地でセミナーやイベントなどキャンペーンを展開。産業界はじめ社会全体へロジスティクスの意義を普及する活動を推進している。
強調月間のテーマは〝これからのロジスティクスのあるべき姿~技術・思考で仕組みを変え、サスティナビリティへの挑戦~〟。AI、IоTの先進技術の活用とともに、物流維持には取引環境に加え、これまでの考え方を変える必要がある。課題解決、先進事例紹介など情報提供を通じて、荷主・物流事業者間の連携促進も期待されるところだ。
推進委員長の吉本一穂早稲田大学理工学術院教授は「これまでのやり方では物流コスト削減は困難。部門、企業間で連携しながら全体最適が求められる」と指摘する。
JILSは売上高に占める物流コストの調査を毎年度行っており、日本における全産業の物流コストの指標とされている。近年5%弱の水準で推移しており、2018年度調査では4・95%と2年ぶりに増加に転じた。労働力不足による物流事業者からの値上げの影響や、企業業績の悪化で売り上げの伸び悩みも関係したとみられる。
先行き景況感は不透明で、荷動きの停滞が懸念される中で、物流コスト上昇によるメーカーの値上げもみられる。一方で運送業は人手不足による物流危機にあり、全体最適をさらに浸透させていく必要がある。
JILSは2030年のロジスティクスのあるべき姿と実現のための指針「ロジスティクスコンセプト2030」の策定を進めており、来年1月にも公表予定である。昨年度はテーマ研究会とともにグローバルSCM米国調査を実施した。
米国調査では日本企業のロジスティクス・SCM高度化が進まない要因として、経営層の理解不足、部門の壁、SCMの専門知識を有する者が少ないなど仮説を立てた上で行った。日米比較を通じて日本のロジスティクスの課題整理を行い、コンセプトに反映して産業界、社会に示す考えだ。
「ホワイト物流」推進運動でSCM全体に課題が共有される流れであり、全体最適を広く浸透させたい。