働き方改革の集大成に

改正貨物自動車運送事業法の「標準的な運賃の告示制度の導入」について、国土交通省の伊地知英己貨物課長が5日の全日本トラック協会理事会で進捗状況を説明した。標準的運賃に対してはさまざまな意見、要望があるが、事業者にとって使い勝手の良い、バランスのある内容であることが肝要だ。
議員立法による改正事業法が成立したのは昨年の12月8日。早や1年となる。このうち「荷主対策の深度化」が7月、「規制の適正化」「事業者が遵守すべき事項の明確化」が11月に施行。標準的運賃の告示制度については施行まで1年の猶予はあるものの、2023年度までの時限立法であり、早期の施行、基準設定が求められる。
全日本トラック協会の坂本克己会長は改正事業法の施行に際し「しっかりと魂を入れること」と主張してきた。働き方改革に対応し一気にドライバーの労働条件改善に動いた。標準的運賃の設定は、トラックドライバー不足で貨物流通に支障が生じないようにするためにも肝となるところである。これの実現により「いよいよ真面目な事業者がしっかりと世の中から評価される」と期待を示す。
現在、国は事業者の業績など情報収集、分析、精査を進めているという。年度内の告示に向けて来年1月に運輸審議会に諮問する考えだ。荷主交渉がスムーズに行えるよう次年度を越さないよう取り組んでいることが伺える。
伊地知課長の説明では「適正な原価に適正な利潤を加えたもの、トラックドライバーの労働基準を改善する方向で進めること」との原則から方針を設定、タリフの枠組みで上限下限は設けず1本の運賃を示す。また原価の考え方は「下請けの実運送事業者がターゲットとなる」ほか、人件費は全産業の平均並み、間接費はトラック運送事業者の平均値を前提とするなど考えを明らかにした。運賃とは別に、料金も待機時間で30分超では1時間当たりの料金を設定したいとしている。
全ト協では物流政策委員会で会員から意見を収集し国に要望してきた。
同日の理事会で馬渡雅敏副会長は「実運送のところに人が集まるような賃金にしないと話にならない。休日がなければ若い人は来ない。これを実現する原資は運賃であることと、適正利潤をお願いしいてきた」とし継続して現場の実情を伝えていくとしている。
トラック運送事業の働き方改革に向けた1つの集大成でもあり、荷主にも説得力のあるものが望まれる。