健全な業界への好循環を

トラック運送事業の健全な発展とドライバーの労働条件の改善を図ることなどを目的とした、改正貨物自動車運送事業法が成立した。

議員立法の改正トラック事業法は、議案として提出された今月4日に衆院本会議を通過し、6日の参院国交委に続き、8日の参院本会議でそれぞれ全会一致で可決され、成立した。

「貨物自動車運送事業の健全な発達及び事業用自動車の運転者の労働条件の改善を図るため、事業の確実な遂行に関する遵守義務を創設するとともに、荷主に勧告をした場合における公表制度の創設等の措置を講ずるほか、貨物自動車運送事業の業務について平成36年度から時間外労働時間の上限設定がされること等を踏まえ、その担い手である運転者の不足により国民生活及び経済活動の重要な基盤である円滑な貨物流通に支障が生ずることのないよう、標準的な運賃を定めることができることとする等の必要がある」 ――これが、改正案の提出理由だ。

1990年(平成2年)に施行された「物流2法」は、規制緩和によって、トラック運送事業を長時間労働・低賃金という状況に変容させ、このままでは「物流が止まる」事態さえ懸念される状況である。さらに安全面では、労働災害の増加に加え、業界としては不名誉なことだが、過労死が全産業中ワースト1という実態もある。

いま、トラック運送事業に求められていることは、労働環境を世間並みにすること、長時間労働に頼らない賃金水準と安全な職場環境の実現であろう。

改正事業法は、ドライバーの労働条件改善を最優先に位置づけ、そのための規制のあり方を見直すものとなっている。安全規制としては、①違反者等の参入規制の厳格化②遵守事項の明確化③荷主対策の深度化――を措置している。
ドライバーの労働条件を改善する原資となる運賃については、時限措置ながら「標準的な運賃」公示制度の導入をあげている。

かつて本紙は「この業界を健全化するためには『蛇口を絞る』必要がある。法令を遵守できる事業者にだけ参入を認め、無計画でいい加減な事業者には参入を許さない、という当たり前のことが求められている」(2014年4月21日付け社説「蛇口絞って健全な業界へ」)と主張した。

「物流2法」から約30年、改正トラック事業法にしっかり対応し、適正に収受した運賃・料金を、賃金など労働条件の改善に回すという、好循環を作り上げよう。