価値創出のプラス発想を

ウィズコロナ時代に対応した新たな物流システムの構築が求められる。国土交通省が幹線輸送と宅配で実施した、非接触・非対面型の調査・実証実験の結果を「手引き」として取りまとめた。その効果とともに普及への課題についても運送業や荷主など各方面から提示しており広く周知したい。
トラックドライバーの時間外労働時間上限規制が適用される2024年が間近に迫り、トラック輸送の持続可能となる生産性向上は喫緊の課題である。
また、コロナ禍の事業環境も3年目となり、社会的にも接触・対面を避ける傾向が続く現状ではウィズコロナを踏まえた施策が必要だ。
手引きによると、宅配は再配達の発生で年間約25・4万トンのCО2が排出され、東京23区の約1・7倍の杉林CО2吸収量に匹敵(2020年調査)するという。再配達率は一時の人流抑制による減少から再び増加傾向にある中で多様な受取方法や関係者間の連携など10の施策を掲げる。何より消費者啓発によるところが大きいが、事業者側も関係者の協調領域の拡大が要点になる。
一方の幹線輸送では中継輸送と貨客混載の優良事例や実証調査から普及への方向を示している。
貨客混載では高速バスの事例として、遅延や破損のリスク対策、さらにデジタル技術の自動化など、課題解決には費用対効果であり、まず荷主の利用を増やすことにある。
また、鉄道の貨客混載事例からは特に地方部では自治体が利点を啓発するとともに、荷物を集約し共同物流を実施するといった発展も考えられ、荷物管理のためのコードの標準化など、やはり運送事業者同士の協調領域拡大の必要性を示す。
中継輸送については国交省が先に普及へのリーフレットを作成するなど「2024年問題」を見据え活用を呼び掛けている。今般の手引きでは非接触・非対面の側面から、乗り換え方式とスワップボディ方式に焦点を当てまとめている。
実証実験からは各拠点の作業時間の削減が必要で、業務効率化には荷主情報のデータ連携や運送事業者間のドライバー労務管理のシステム化など課題を示す。やはりキーワードはデジタル化であり、荷主の協力が不可欠である。
非接触・非対面型の輸送方式を実現することで、生産性の向上とともに、消費者の利便性向上や新たな価値創出に繋がる期待もある。物流を止めない危機意識とともにこれらプラス発想で意識を変えていきたい。