サプライチェーン全体の共存共栄を

取引先との共存共栄関係の構築を目指す「パートナーシップ構築宣言」の登録企業数が1万社を超えた。サプライチェーンの取引先や価値創造を図る事業者との連携を進め、新たなパートナーシップを構築する狙いから国が2年前に立ち上げたものだ。製造業が約4割を占める一方、運輸、郵便業は148社にとどまるなど業種間には開きがある。
サプライチェーン全体の共存共栄と規模・系列を越えた新たな連携や、親事業者と下請事業者との望ましい取引慣行の遵守を宣言し、ポータルサイトに掲載することで取り組みの「見える化」を行う。登録企業は補助金の加点措置や宣言効果などのメリットが得られる。
登録企業の宣言内容には「ホワイト物流」推進運動に関する「自主行動宣言」表明済みとの記載もみられる。2019年4月に立ち上げた「ホワイ物流」の宣言企業が1417社(5月末)であるのに対し、パートナーシップ構築宣言は20年7月の立ち上げから2年で1万社を超えた。
20年5月に開催した、経済界・労働界代表と関係閣僚をメンバーとする「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」でその枠組みを創設、7月にポータルサイトを開設した。1000社となったのが21年3月でコロナ禍の状況も影響したがその後一気に広がった。
宣言における「新たな連携」とは企業間連携、IT実装支援、専門人材マッチング、グリーン調達などを具体例に掲げる。実際に登録企業の内容をみると、災害時対応やBCP、テレワーク、さらには脱炭素への取り組みなどが業種問わす取引先への支援策として多く見受けられる。事業継続に必要不可欠な要素だ。
さらに物流関係事業者からはデジタル化によるサプライチェーン全体の業務効率化・最適化や、オープンイノベーションによる新規事業創出、地域課題解決など幅広い宣言内容の事例もある。サプライチェーン全体の価値創出へ物流業界が果たすべき役割は大きい。
宣言内容のもう1つが取引慣行の遵守。中小規模事業者への取引条件のしわ寄せ防止へ下請取引の適正化を図る。
中小企業庁が行った3月の価格交渉月間フォローアップ調査では、トラック運送業が価格交渉の協議において27業種26番目に低く、コスト転嫁率は最も低い。元請から下請の多層構造で他産業と比較して転嫁が進まない。発注側としての物流業界の同宣言のさらなる周知が求められるところだ。